第三の弟子 アクリス異誕
第44話 アクリス登場なの
「もー! いつも急に引っ張るんだから、驚くじゃないっすか!」
(…… 賢者様の着ている服に、魔法が織り込まれていると思うの)
「えーっと、あぁさすが、アクリっち! この大賢者様はそういうとこは抜け目ないっすからねぇ」
「何が抜け目ないんですかぁ? 私にも見せてくださいよー」
白色の大きな帽子をかぶり、三原色で彩られたローブをパタパタさせ、水玉模様のニーソックスを履いた足を内股にモジモジさせ、アクリスは、クリスタルの板を持って首を傾げている。
「ん、なんすか、それも落ちてたっすか? うーん、これ、文字が書いてあるようっすね」
アクリスさん、目が見えないのになんでそんなん拾うかなぁ。
それよりも早く俺を生き返らせてくれ。もう魂が魔法瓶みたいに天に向かって引っ張られてるんだよ。
「4188026 1249276 B72W53H75…… うーん、分からんっす。何枚か似たようなのもあるし」
(なんて書いてあったの?)
いーから、ほれ、ほれ! 新鮮な死体がここにあるでしょ! そんな文字列どうでもいいだろ、解読できるとは思えないし、解読されても困る。
「それよりも、今日こそ、アクリっちの顔見せてくださいよー! リテラっちしか見たことないなんて不公平っす!」
「えぇっ、アクリスちゃんの帽子壊していいんですか? 私も加勢しますよー!」
いやいや、それよりもって、どういうことだ。
冷たい床で冷たくなってる可哀想なおっさんより、帽子の下のかわいいアクリスの素顔がいいって言うのか、お前ら。うぬぐぅ、そりゃそうだ。
キュリオは勢いよく飛びつき、チャリスは杖に魔力を溜めていっている。3頭身にもみえる大きな帽子を引き上げられ、かわいい鼻が見え隠れしながらも、アクリスはビックリして帽子を必死に押さえつけている。
アクリスの大きな帽子に付けられている魔力掲示板には、(やめてー!)と文字が映し出され、帽子は次第に赤い色に染まっていっている。
アクリスのグローブに彩飾された魔石が煌めくと、大きな帽子には構築式が展開されていく。
色とりどりのクラゲが帽子からフヨフヨ浮かび出していくと、キュリオとチャリスの頭にかぶさりモニュモニュしている。
キュリオは帽子からずり落ち、頭を突っ伏しており、チャリスは、溜めていた魔力がシュワシュワと放出され、ヘナヘナと女の子座りでペタンとお尻をついている。
「ぶべっ、ぺっぺっ、無礼、陰湿、アウトオブ眼中、リテラっちはない…… っすよ」
「あわわわわわ、憎しみが一つ、憎しみが二つ……」
チャリスとキュリオは、クラゲを頭上で蠢かせながらほっぺを地面につけ突っ伏しながら項垂れている。
アクリスの少し持ち上げられた帽子の奥から、透き通るような瞳がゆらめいているのが見える。
全く何をしているんだか。
(見ないで、なの!)
浮遊する彩り豊かなクラゲたちが赤く染まりながら、プンスカと言わんばかりに腕を組むアクリスの頭の上ではしゃいでいる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます