第41話 キュリオが死なせてあげないっす

 キュリオは、背面に煌めく人体図を羽ばたかせながら、半正多面体の小結界を足場にしてピョンピョンと飛び跳ね、チャリスたちの元へと向かっていく。


「ウィヒヒヒ、首だけでも回復できるもんなんすねぇ。ウチ、多分まだ蘇生はできないと思うっすけど。どこまで削れば、回復できなくなるんすかね。ねぇー? メフィレス?」


 メフィレスの首からは、彩り光る螺旋構造が突き出しており、少しずつ、身体が構成されていっている。

 首を切られる処刑でも、数秒間意識があったとする記録もあるし、定かではないが、身体が構成されていってるのならそういうことなんだろう。


「あはぁ、キュリオちゃん♪ ドラきれいですねー」


 チャリスは、自分の吹き飛ばした腕の部分に突き刺さっている光の螺旋構造、光る釘と化しているメフィレス、後光でも発しているようなキュリオと、目移りしながら、また、どれかをふっ飛ばすんじゃないかという勢いで魔力を高めていってる。

 まさに、ロシアンルーレット、いやチャリスルーレットか。

 青白い後光を輝かせるキュリオ、赤黒い魔力をモヤモヤさせているチャリス、この2人の魔力が混ざり合う状況は、畏怖嫌厭、カタストロフィ、神の子と悪魔の子、魔王だろうが勇者だろうが、後退りするんじゃなかろうか。


「メフィレス、お前の大好きなプレイでは、こういう時どうするんすか? オッパイでも欲しがるんすかねぇ?」

「フガ、フガガ……」


 おいおい、チャリスならともかく、キュリオ…… の? あげるようなもんないだろう。

 メフィレスも心臓部まで回復してきている。そろそろ頭にも血がのぼりはじめてるだろうか。状況を理解し始めているかな?


「お前は中途半端なんすよ、輝かせるためにクリスタルにする? どうせならお前が羨望する嬰児でも作り出せばいいものを」

「そ、そんな禁忌な……」

「そうっすか…… それくらいの覚悟で、人の可能性を…… ウチにはそんな薄っぺらい覚悟こそが禁忌だと思うっすよ」

「もっと、もぉっと、愛させてくださいよぉ」


 キュリオは、ビスビスと渦巻く瞳をチャリスに向けて笑いかけている。

 チャリスも瞳を一層ゾワゾワさせながら、赤く激しく光る光球を四方に展開し、杖とメフィレスをフリフリしだす。

 これは、また…… とりあえずこの空間は結界で覆っておこう。ないよりはいいだろうし、俺の結界もだいぶ揉まれてきた。


「お前のことをウチは許さないし、もう興味も薄れたっす。ただ、チャリっちには何も背負わせないっすよ、壊されても死なせないっす」

「あふぇ♪ ど・れ・に・し・よ・う・か・な♪」


 チャリスは、メフィレスを自分の顔の前にぶら下げ、さぞ美味しそうに舌なめずりをしながら、いただきますのタイミングを待ち構えているようにゾワゾワした瞳で見つめている。

 あっぶな、今俺も含まれてたよな、ふぅ、よかったぁ。

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