第39話 キュリオはズッキュンといくっすよ

 …… っく! チャリスは、まぁ…… 信じるしかないか……

 それよりも、クリクリ病をなんとかしなければ。

 ある程度見知った人でなければ、完全なクリスタル化から元の状態へ戻すイメージを持つことは難しい。付き合いの浅い俺では、解呪法を見出せてもこの子たちを救うことはできないだろう。

 キュリオでもできなそうなら、メフィレスには生きててもらわなくてはいけない。


「どうだ? キュリオ、そのクリスタルの板の情報でクリクリ病は治せそうか?」

「いやぁ、この板はなんで情報が映し出されてるんすか? 面白いっすよ、不思議っす、こんな使い方もあるんすねぇ」

「いや…… そっちはいいから、クリスタル化を治すのにはどれくらい時間がかかりそうか分かるか?」

「あぁ、それは今試そうとしてるとこっすよ」

「え……?」


 瞳を渦巻かせながらキュリオは、前についていた自分より大きな螺旋状の杖を両手で強く握りしめている。

 ウィンプルとその下から覗く青い髪をはためかせながら、杖を中心に構築式が展開していっている。

 頭の上に飛び出ているハート型のアホ毛は、まるで楽しんでるかの如くピョコピョコと左右にリズムよく揺れている。

 展開された構築式が踊るように回り崩れていくと共に、キュリオの背面からは、2体の大きな人体が翼を広げるように展開され、円状の魔法陣が煌めきながら描かれていく。まるで、ウィトルウィウス的人体図…… 確かに、こんな光景を見たら…… 神の子と思ってしまうかもしれない。


「ウィヒッ、リテラっちがいるからっすかね、なんだかいつもより魔力がみなぎる気がするっすよ」


 ヨッシー、ケット、孤児たちの頭上には次々と青白く光る二重螺旋状の杭のようなものが、その人体図から放射され配備されていく。


「さぁて、ズッ…… キュンっといくっすよ!」


 キュリオの掛け声と共に光の螺旋構造は突き刺さり色とりどりの光を発しながら浸潤していく。それと共に孤児たちはクリスタルから徐々に元の姿へと戻っていく。

 おぉ、ズッキュゥーン、いつのまにか俺の股間にも光の螺旋構造が突き刺さっとる。

 あぁ、そうそう、この落ち着き感、存在感、おかえりなさい。そうだよ、やっぱり真ん中にぶらぶらしてないと始まらん。久しぶりじゃないか、我が相棒!

 俺は、自信を取り戻し、周りを見渡しながら、使えそうな布生地を集め、回復し裸同然で眠っている孤児たちに簡易的な服をこしらえてあげた。


「キュリオ…… お前、やっぱ天才…… いや、大したやつだよ」

「結局、分かれば毒の治療と大差ないっすよ。それよりも、メフィレスの頭の中の方がどうなってんのか…… ウィヒヒ、どうすれば分かるっすかねー」


 ハハ…… そんな簡単に言えるのは、キュリオが今まで費やしてきた時間あってこそのものだろう。

 キュリオの好奇心は、倫理やモラルでは測れない。

 『好奇な黄金比ジーンドライブ』か。キュリオの渦巻く瞳が物語っているようだ。

 まぁ、ご愁傷様だ、メフィレス、そもそも手遅れでなければいいが。


 ズズ…… ドゴゴ……


 地響きも少しずつ大きくなってきている気がする。


「さて、チャリスの後を追うとするか」

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