第38話 キュリオは分からなくなりたいっす

「いい大人どもがオギャー、オギャーうるさいっすねぇ。そんな表面的なものはいいっすよ、クリスタル化した腕の切断面とか見たことあります? クリスタルをどれだけ切り刻んでも分からなかった、ウチにもっと面白いものを見せてくださいっすよ」

「…… お前、何を言ってるんだぁ?」


 キュリオは、俺がメンタル的に戦闘不能になっている横で、メフィレスとの相対を続けていく。

 マウントとってかっこよくキュリオの後押しをしてあげたかったのに、グフゥ、パンチの効いた高度な応酬だったぜ。

 俺はとりあえず、クリスタルの板をキュリオに手渡す。

 このクリスタルの板は、クピディの技術を応用したものだ。もう片方のクリスタルの板の近くで魔法を使用した時、構築式などの情報がこちらの板にも転写されると言う仕組みだ。おそらくクリスタルの板を持ったケットの前で魔法を使ったようで、情報が映し出されている。

 クリクリ病と向き合ってきたキュリオなら、この情報から色々分かるはずだ。

 キュリオはつまらなそうな顔をしながらも、クリスタルの板を受け取った。


「あぁ…… やっぱりクリクリ病はただの魔法なんすか? 分かっちゃうものほどつまらないものはないっすねぇ。人の可能性を奪ってまで見たいものってなんなんすか?」

「私は、世界を輝かせてるお手伝いをしているのだよ」

「それは人の可能性より面白いものなんすか? ウチにはそれが分からない、お前の脳みそをほじくりかえせば分かるんすかねー? 」


 キュリオの目が渦巻きを増していく。

 メフィレスも、反射的に身を守ろうとする仕草をしている。


「私をどうしても悪者にしたいようだなぁ。私はただ、この町を輝かせる、幻想的にしたかっただけ、可能なら秘密裏にそれが私の使命でありあの人の望みだったからだ。だが、もう、いいだろう……」


 メフィレスの魔力が増大していき、周囲にあったクリスタルが怪しく光を放っていく。

 俺も、結界を展開していくが、意味がないのか、間に合っていないのか、次々に光を浴びていった孤児たちがクリスタル化していっている。


「新芽のように、クリスタルになり、輝きを創造してみせよ」


 メフィレスは、クリスタルを片手にもち、キュリオに向かって投げつけてくる。

 その時ばっとヨッシーが出てきて、キュリオへ向かうクリスタルを身を挺してはじいた。

 光を浴びた部分から徐々にクリスタル化していきながら。


「ヨッシー……」

「これでケットにも顔負けできる、そうでしょ? リテラ兄ちゃ――」


 ヨッシーは、俺に笑顔を向けながら、クリスタルとなっていった。

 そうだな、お前の行動を後悔や失敗になんてさせないよ。


「ふん、意味のないことを。しかし計画は狂ってる、クリスタルがもっと必要だなぁ」


 そう言いながら、メフィレスは、壁の術式を光らせ消えていった。


「ふぅ…… クリクリ病はもういいっすよ、それはもう分かった…… ウチにとって面白い方を選択するっすよ」


 キュリオは、杖を前につき――


 ボッッゴゴオォォォンン!


 な、なんだ!? 音の方を見るとどでかい穴が地面にポッカリ空いている。

 薄暗い穴の奥からは、時折プラズマが空に向かって迸っていっている。

 こ、ここは…… さっきまでチャリスがいた場所……




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