第37話 キュリオは赤ちゃんプレイには興味ないっす

 二人の魔力が上がっていっている。

 お互いの欲求が高まっていく。


「チャリス、二人の特性スキルって何かわかるか?」

「リテラ様はぁ、特性スキルが知りたいんですかぁ? ギットギトに♪ ギットギットにぃ♪ 魔力をコネコネしちゃいましょ〜♪」


 ぬ、お? やばい、チャリスも魔力に反応してしまってる、ここは町の中心地、頼むよ、チャリス…… 神様、チャリス様。

 チャリスは、杖に頬を擦り付けながら、粘つく魔力をたぎらせていっている。


「キュリオちゃんはぁ、『好奇な黄金比ジーンドライブ』、メフィレス様は、むふぅ、『嬰児への羨望ソーシャルファースト』みたいですよぉ」


 ふむ、相変わらず分かりにくいが、なんとなくプロファイリングとの一貫性はあるように思う。メフィレスは赤ちゃん大好きみたいだしな。


「輝きをなくしてなお何を求めてるんだ…… 格差、失業、依存、貧困、輝きのないものに救いはないだろぉ」

「それとクリクリ病に何か関連があるんすか? クリクリ病が救いだとでも?」

「太陽がなぜ輝いている? 輝くためには様々なものを燃やさなくては…… そう犠牲が必要だ、当たり前だ。世界を輝かせるためにだって犠牲が必要、しょうがないことだ。お前だって嬉しそうな顔をしているじゃないか」

「そうっすね、メフィレス、興味津々なんすよ。女の子に興味を持たれて嬉しくないんすか? お前の中身を知った時、そこには確かに輝きが溢れているかもしれないっすねぇ」


 キュリオの目がビスビスと渦巻いていく。


「おかしな事を言う…… 私は、赤ん坊以外に興味はない」


 お? こいつ、自分からぶっこんできやがったぞ。

 ふふふ、今こそ、俺の情報網が火を吹き、あいつを再起不能に貶めてやろうぞ。


「ハハハ、自分から言うとはな、メフィレス、ヨッシーたちに調べてもらってるぞ。お前は夜な夜な赤ちゃんプレイができる『バブバブパラダイス』の常連らしいじゃないか! クリクリ病で稼いだ金で、そんな威厳ありそうな格好で、いいご趣味なことだ、なぁ? メフィレス」

「お前は何を言っている? 赤ん坊はなぜあんなに無垢で輝いていると思う? 全てを曝け出しているからだ。相手に全てを依存する、相手を犠牲にしてこそ自分が輝けている、至高の存在だ。まぁ、お前には到底わからんだろうがな」


 メフィレスは、黒ずんだ目元、吊り上がった眉、歪んだ口元、相も変わらず意地悪そうでいて堂々とした佇まいだ。

 しかし、なんだこの感じ? ここは辱められて、メフィレスが立ち直れなくなって俺がマウント取っていくパターンだと思ったんだが。

 正当化されてる? 赤ちゃんプレイって神聖なことなの?


「ヨッシーちゃん、ヨッシーちゃん、赤ちゃんプレイってなんですか?」


 ヨッシーは、恥ずかしそうにチャリスに何やら耳打ちをしている。


「あぁ♪ よくリテラ様からのお願いに似てますね〜。かわいいもふもふした耳のついた帽子を用意してくれて、語尾をニャン♪ にしてくれって言われたり、白黒のフリフリしたかわいいお洋服でご主人様♪と呼んでくれって頼まれたり、ね♪ リテラさ――」

「チャリーース!!! 今ぁ、俺ぁ大事な話をしている最中だぁ。気ぃを引き締めろぉ!」


 うぅ、孤児たちからの視線がなんだか痛いのは気のせいだろうか……

 辱めようとしたのに、辱められてる気がするのは気のせいだろうか……


「リテラ兄ちゃん……」

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