第36話 キュリオの興味の餌食にしてやるっす
「これは…… 構築式?――」
「リ、リテラ兄ちゃん! ケットがクリクリ病に……」
輝きを放つクリスタルの板を見ていると、孤児のヨッシーが息を切らしながら駆けてきた。
俺たちは、ヨッシーについていくと、そこには孤児たちの人だかりができていた。
その中心にあるクリスタルに近づいていくと、ケットの顔が少し出ているだけで、他の部分はクリスタル化してしまっている。チャリスのスカートをめくっていた時の悪戯な笑顔はもうそこにはなく、気絶しているのか、死んでいるのか、目は閉じられており、みんなの声にもピクリともしていない。
キュリオは眉間にしわを寄せながら、回復魔法をかけ始めている。
ケットは、魔法は使えただろうか? それにクリスタル化の進行が俺と比べても速すぎる。
「ヨッシー、ケットに何があったんだ?」
「……俺が悪いんだ。ここにフラートルのクリスタル採掘場への隠し通路を見つけて。それでそれで、ケットならうまく潜り込めそうだったから、もう早くクリスタルの板を置きに行こうって」
「ん? なんでお前、その作戦知っているんだ?」
それは、俺がやろうと思っていたことだ。チャリスと手分けして隠し通路を探していたはずなのだが。
「チャリス姉ちゃんが独り言を呟きながら、探し回ってたから……」
チャリース! いや、今回チャリスは、そんなに悪くないか。チャリスもケットの顔を心配そうに、撫でてる…… し。悪気があったわけじゃないしな。みんな自分にできることを全うしようとしてくれただけだ。
「それで、クリスタルの板を置いてくれたわけなんだな?」
「多分…… 持ってなかったから。ケットは、クリスタル化しながら、逃げるように出てきて、そのままこうなっちゃって…… 俺が、俺が悪いんだ! こうなるなんて……」
ヨッシーも、他の孤児たちも涙を目に浮かびながら、こぶしを握り締めている。
「ケットはお前らのことを恨みながらクリスタル化したのか? お前らは自分が正しいと思うことをしたんだろ? 結果は結果だ、過程や覚悟まで否定するな。大丈夫、まだ結果を決めつけるには早いだろう」
俺は、ヨッシーたちの頭を強めに撫でてやった。
――カッと、フラートル大聖堂の壁が光ると、メフィレスが緑と黒のジャケットローブを翻し、紫の服を着た華奢な肉体をだるそうに動かしながら出てきた。
「あぁ、そこに転がってたのか。侵入した上にクリスタルシンドロームになるとは。フフフ、良い輝き具合じゃないか。そうだ、穢れ具合を自覚するといい。しかし場所が悪いな、あぁ、ちょうどいい、群がる憐れなお前らがそれを持っていくといい」
「それ……? お前、何を言ってるっすか?」
「あぁ? 相変わらず、お前は私の邪魔をするのが好きなようだなぁ」
「そうっすねぇ、ウチには理解できそうにないお前の頭の中、この異様なクリスタル化、確かに興味あるっすよ、付き合ってくれないっすか? メフィレス」
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