第35話 キュリオの興味の先には何が見えるっすか
「キューリーオちゃん! キューリーオちゃん!」
神父の爺さんは、キュリオを助ける目的で親衛隊みたいなのを作ったらしいが、当のキュリオからは拒絶されているらしく、行き場のなくなったエネルギーを発散させていたら、賛同者が増え、逆にキュリオの悩みを拡大させてしまってるようだ。
◇
俺は、チャリスと共に数日間フラートル大聖堂の周りを探索していた。
中は案外普通に入れる。入り口を抜けると、中央回廊が続いており、上を見上げれば、神聖そうな像が飾られ、窓のステンドグラスからは淡い光やプリズムのような彩りある光が差し込んできている。
フラートルで治療を受ける人は、一番奥の祭壇横の地下通路へと入っていく、その先に採掘場もあるようだ。
ただ孤児のヨッシーたちに聞いたのだが、採掘場には、クリスタルを運び出すための隠し通路の術式もあるらしいのだがまだ見つけられていない。
「あれ? チャリス、ここにあったクリスタルの板、2枚あったと思うんだが、片方知らないか?」
「さっき、ヨッシーちゃんたちが来て、遊んでたので、割っちゃったんじゃないでしょうか?」
……マジか。あいつら。
せっかく神父の爺さんに分けてもらったクリスタルを……
「あれ、キュリオじゃないか? 何してるんだ?」
俺はクリスタルの板を片方持って神父の爺さんを探しに外へ出てみると、教会のすぐ脇の辺りでキュリオが自分より少し大きめのクリスタルに手を当て立っていた。
「リテラッち…… この人は1ヶ月ほど前に、全身がクリスタル化してしまったんすよ」
「そうか。そういえば、お前…… 魔族が来た時は結構な活躍だったらしいじゃないか?」
「はぁ、爺さんらに聞いたっすか? そんな大したことは…… ただこの人はウチが回復させた人だったんすよ」
「このクリスタルも色々調べてるのか?」
「……もう他の人でしたっすよ。クリスタル化した部分を引きちぎったり、砕いたり、熱したり、回復魔法をかけてみたり、でも苦しませるだけ。神の子ならきっとって、期待されても…… 何もできないんすよ」
「キュリオちゃんは、笑顔の時が一番魔力が出てますよぉ、それがいいんですよぉ」
チャリスだって、憎しみに生きてた時期もあっただろうに。
今や魔力を愛し愛されている。
人間とは実に矛盾した生き物だ。
「ウチが興味あることは、人を苦しめちゃうっす、魔族が来た時だって、必死に回復させようとしたのにみんな冷たくなってしまった。なのにみんな綺麗な顔をしてるんすよ。なんでこんな綺麗なんだろうって、だから、調べて調べ抜いて……」
「でも、そのおかげで、たくさんの人を回復できたんだろう? 魔法はイメージも大事だ。人体の構造をわからないまま、高度な回復なんてできっこない」
「でも、クリクリ病は、みんなを苦しめるだけで、治してあげられてないっす……」
「結果が全てじゃないだろう。今のところ、チャリスと違って迷惑をかけてるわけでもないしな。現にキュリオはみんなから慕われてる。嫌ならやめればいいし、好きなら信じ突き進めばいいじゃないか」
チャリスは口を尖らせながら、杖を人差し指でイジイジとこねくり返している。
「治せなくても、人が死んでしまっても興味を持ち続けててもいいんすか……」
「いいも悪いも、決めるのはお前、俺は俺の価値観でしか見れない。お前の興味の先にはどんな世界が広がってるんだ――」
その時、俺の持ってるクリスタルの板が光り出した。
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