第30話 キュリオはアンデッドだろうが介護してやるっす

 帳面を見ると、この教会、摩天楼を中心として遠くなるほど発症者は少なくなる傾向があるようだ。

 この町の特徴としては、クリスタルの鉱脈がいくつかあり、そこを中心に生活が回っているっぽい。

 ほとんどの家にはクリスタルが見られ、それは電気の役割であったり、熱を発したりなど、また支給されたりもあるようで、様々なところで生活の役に立っているようだ。

 クリスタルは、この町のライフラインと言ってもいいだろう。

 だからこそ感染経路としてもクリスタルは少し怪しくみえてくる。

 俺は、孤児たちに、簡易的な質問票を作って、クリクリ病の人たち、その家族に聞き取りを行ってもらっていた。


   ◇


「ちょっと、暗くなってきたな」

「うん、お腹すいちゃったよー」

「あぁ、ありがとうな、お前ら。そろそろ俺の治療の番になるかもしれないし、パンでいいならチャリスからもらってくれ」


 ヨッシー達は疲れたと言いながらもまだ走り回っている。

 クリクリ病は、お金がなければ不治の病だ。俺が聞いても、不審者扱いされるところを、ヨッシー達は、うまく聞き取ってくれていた。

 そのおかげもあって、まだ仮説段階ではあるが、いくつか分かってきたこともある。

 まず、クリクリ病は、人から人への感染の可能性は低そうに見える。家庭内感染はほぼ皆無だし、治療にあたっている聖職者で発症者が出ていないというのも説得力を増す材料だ。

 また、教会に来ているのが、貧困層が多いというのもあるが、いわゆる社会的弱者の感染が多い傾向が見られる。

 そして、罹患者の全ては、多少なり魔法が使えるというものであった。


「うーん、なんか匂うよなぁ」

「うえぇ! 私、昨日お風呂に入ったのですが……」


 チャリスは、小動物が毛繕いでもするかのように、自分のいろんなところを嗅いで確かめている。


「あ! キュリオ姉ちゃんだ!」


 ヨッシーが指差す方を見ると、キュリオが自分より大きな杖を担ぎながらピョコピョコと縦横無尽に走っている。


「おい、子供はもう帰る時間だろ?」

「うっさいっすねー、治療はしてもらえたんすか? さっさと大好きな夜のお店にでも行ってくればいいっすよ」


 そう言いながら、キュリオは、奥の狭い路地の方へと走っていった。

 そこには古びた木箱に爺さんが座っており、片足が完全にクリスタル化していた。

 爺さんの前に膝をついて、杖から構築式を展開し、キュリオは治療を開始している。

 あれは、変化系の構築式か。


「キュリオ、いつも申し訳ないのぉ。だがあまり良くならんし、もう治らん。この足も治療に役立つんなら好きに使ってくれてもいいんじゃぞ?」

「なぁに言ってんすか。まだまだアンデッドみたいにしぶとく生きるっすよ

「なんじゃあ、わしがそうなったら浄化せずに介護続けてくれるんかのぉ?」

「ハハ、天まで介護してあげるっすよ」

「そりゃあいい」


 2人とも、ガハハハハハと高笑いしている。


「キュリオちゃん、嬉しそうですねぇ」

「まったく、なんとかしてやりたいな」

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