第29話 キュリオがお姉さんじゃダメなんすか

「朝はごめん! クリクリ病で困ってるならここでは家族だ。それに金がないなら尚更だ」

「お、おぅ、気にしてないよ。そんなことのために来てくれたのか?」

「何か手伝えることあれば言えよな?」


 頼もしいな。家族…… いい響きだ。

 孤児たちは、リーダーっぽい子と並んでみんな手を合わせて謝ってきてくれている。

 1人ちびっこいのは、謝りながらチャリスの胸に飛び込んでるけど。

 この教会は助け合いの精神で支えられているのかもしれない。

 キュリオたちは無料でクリクリ病などに向き合ってるみたいだし、聖職者じゃなさそうな人たちもたくさん手伝ってくれていそうだ。

 そういうのは俺も好きだ。


「そうだな、じゃあ話し相手になってくれないか? この町のこととか色々教えて欲しいんだ」


 そんなことならとみんな周りに集まってきた。

 俺は、たまに、チャリスを刺激しない程度に魔法芸を織り交ぜながら、孤児たちと楽しく会話をしていった。

 チャリスも、元々純粋な子供っぽさもある。中に入りながら、子供たちにいろんなところを引っ張られ、一緒にぷにぷにとはしゃいでいた。


 この子たちは、みんな家族を、魔族の襲撃やクリクリ病で亡くしたらしい。そこで教会が面倒を見てくれるようになったようだ。

 5年ほど前魔族による大規模な襲撃があったらしく、町の人たちの多くが命を落とし、その時できた大きな襲撃跡が後々クリスタルの鉱脈の発見にもつながってるらしい。

 また、大規模な襲撃は、魔族との交流が盛んになり始めた時からだったため、町の外への人や魔族に対して、必要以上に警戒を持つ固定観念をもつようになっているのかもしれない。


「それで、教会が家同然、ここの人たちは家族みたいなもんなんだな?」


 ヨッシーを先頭にみんなで嬉しそうに頷いている。

 そう、孤児たちはみんなで5人だ。

 このよく喋ってくれているのが、リーダー柄の男の子、ヨッシー。

 周りをウロチョロしてるのは、チャリスのスカートを捲っていた男の子のケットだ。たまにチャリスの股の下に滑り込んでは、チャリスを驚かせているエロガキだ。

 ヤンチャそうに、話を聞いているのかいないのかずっとガハハハと笑っている男の子はイッチ。

 イッチを見ながら、ほえぇと天然そうに笑ってる女の子はトロリ。

 腕を組みながら、お子様の割にお姉さん感を出している女の子はセシーだ。

 みんなおそらく、小学生中頃くらいの年齢だろうか。

 キュリオはみんなのお姉さん的存在みたいらしい。まぁ、客観的にはセシーの方がお姉さんっぽそうにもみえるんだが……


「お前ら、キュリオのことが大好きなんだな」

「キュリオ姉ちゃんは、たまに意味わかんないお願いをするけど、いつも僕たちを助けてくれるんだ。だから僕たちも町の見回りしたり、家から出られない人のお手伝いをしてるんだよ。キュリオ姉ちゃんはいつもずっと頑張ってるから」


 意味わかんないお願いっていうのは、なんとなく想像がつくが。そこはあまり深く突っ込まないでおこう。

 まぁ、キュリオが慕われてることに変わりはないだろう。


「そうか、じゃあ、ちょっと俺のことも手伝ってくれないか? 多分、キュリオのためにもなるはずだし、クリクリ病のことを少し知れるかもしれない」

「え?」

「俺の治療の番はまだまだ先そうだしな、一緒に少し調べ物をしてほしいんだ」

「それで、クリクリ病は治せるの?」

「分からない。けど、分からないことを分かりたいんだ」


 孤児たちも分からないながら乗り気でいてくれているようだ。

 俺は、みんなと一緒に外を歩きながら、帳面を参考に、いろいろと聞き取りを行なっていくことにした。

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