第27話 キュリオの教会になんか文句あるんすかねぇ
俺は、眠っているチャリスをおんぶし、キュリオについていきながら、その重みと感触に成長を感じていた。
柔らかい部分に、弾力のある部分、すべすべした部分に、モチモチした部分、魔力の上がり方に…… と。
チャリスをこの1年見てて思ったことだが、欲求を満たし源泉を解放できれば、魔力は無限に近く取り出せるはずだと思っている。
でも、通常は誰しも欲求に対してなんらかの理性や自我、ブレーキが少しはかかるものだ。
チャリスは良くも悪くも無意識の没頭型、ゼロか100かに近い。だからこそ、可視化できるほどの魔力を出せているのだと思う。それは廃人にも社会不適合者にもなりうる可能性でもあり、表裏一体だ。
俺はいなくならない、強くなるのに付き合うとチャリスと約束した。欲求を曝け出すことで生きにくくなる世の中なんてまっぴらだ。
そんな思いは可能な限り排除してやりたい。そのせいで誰かを悲しませたくない。
俺が『勇者』でなくなった、そんな思いみたいなもんは、特に……
◇
「ついたっすよ」
おぉ、やはり、この摩天楼のような建物は大聖堂なのか。
ゴシック様式のような作りの塔、窓は尖頭アーチになっており、煌びやかなステンドグラスで埋め尽くされ、40-50階くらいはあるだろうか、優雅に聳え立っている。
俺たちは、幾重にも連なる彫刻が迎えてくれる大きな入り口に足を運んでいった――
「何してるっすか? こっちっすよ」
「は?」
キュリオの指差す方を見てみると、大聖堂の影に埋もれているなんか廃旅館みたいな建物がある。
え、これが教会? こっちじゃないの?
「そっちはフラートルの、最近魔法建築で建てたんすよ。クリクリ病で潤ってるみたいで……」
「じゃあさっきの奇抜なおっさんのとこってことか? 潤うって…… この町は、クリスタルが所かしこにあるけど、特産みたいなもんなのか?」
「そうっす、地下にいくつか鉱脈を見つけてここのクリスタルは普通のと違って魔力を帯びてるので色んな所と取引されてるんすよ」
キュリオの格好もそう言う目線で見てみると元は真っ白だったろうローブもクリーム色だ。この教会はカツカツなのかもしれない。
ふむ、クリクリ病とその魔力の関連性もありそうだが、そんなんみんな少しは感じてることだろう。
「クリスタルからクリクリ病になるとかは?」
「確かにそれを疑っていなくなった人たちもいるっすよ。ただクリスタルとこの町は昔から切っても切れない関係なんすよ。クリクリ病はここ最近1年くらいのことですし、それまではなかったんすよ。原因は最初も言ったけど分からないんす」
ふむ、最初の世界での自動車やタバコみたいなもんなのだろうか。害はあるかもしれないけどそれ以上に生活と結びついてしまっているのかもしれない。
1年前…… また、アスペラトゥス発動時期と被るな。
「物事に変化が起こる時は、何かしらの因子が関わってるはずなんだがな」
「1年前は、魔王もいなくなったから、みんなで王都に行ってきて、ここのクリスタルを広めたんすよ。それから往来が増えてきて、姫様とかも視察隊とここにいらしたんすよ? 町は賑わったけど、その辺りからクリクリ病が出始めてきたんすよ。だから外から何かが入ってきたんじゃって、昔からの血筋でないものせいだとか、火山のせいだとかもうめちゃくちゃっすよ」
また、自分が関わってる可能性もあるし、俺自身も罹患してるわけだ。踏ん張りどころだなぁ。
「むにゅむにゃ…… 壊していいんですかぁ? むふふふふ」
肩越しに見えるチャリスの顔は、ほっぺを弛ませ涎でも出そうな口を半開きに歪ませとても幸せそうだった。
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