第17話 チャリスは魔キューーンと放つのです

「チャリス、お前さっきから何をやってるんだ?」

「クマたんに当たらないので、リテラセンパイの魔力を真似てみてるんですよぉ」


 チャリスの杖には、構築式が展開され、閃光の周りを稲妻が踊り歩く。

 チャリスは、青い魔力を纏いながら、杖をクマたんに向け、照準を定めるようにゾワつく目を向け、ウインクする。


「魔キューーーン!」


 チャリスは、得意げに口を尖らせながら、必殺技のように魔法をクマたん目掛けて発射している。


「あぁん、ダメでしたぁ」


 相変わらずクマたんはワームホールを使いこなし、代わりに優雅な大自然が損害を被っていく。

 景色は移ろいゆく、いや変わっていく。

 あぁ、深くお詫びを申し上げたい。


 しかし、魔力の違いは俺にはわからないが、魔力を源泉から引き出す欲求によって、特性は出てくる。

 俺の場合は、クラウドの利用だが、そういえば、チャリスは魔力を味や匂いでよく表現しているけど、模倣的なものができるのかもしれない。


「チャリス、お前、他人の魔力をマネできるのか?」

「リテラセンパイのでしたらできましたよぉ。雷の時は、生甘しくて、ムワッとしてツンッて感じですー」

「あ…… そう。クマたんの…… いやクピディの魔力はできそうか?」

「うーん、ちょっとやってみますねっ。クピディ様の魔力は、ネチョネチョして、ギトギトして、ムハァって感じで、病みつきになるんですよー♪」


 クピディの魔力よりは、俺の魔力の響きはまだ良さそうだ。生甘しくって、生チョコみたいなもんだろうか。


「そしたら、クピディの魔力で構築した魔法であの黒い渦を攻撃してみてくれないか? そしたら、クマたんに攻撃が届くかもしれない」

「あはぁ、かしこまりですー」


 チャリスはブツブツ言いながら、前屈みに杖を抱きしめ、魔力が増大、可視化されていく。身にまとう魔力は、ウネウネとしだし、ドス黒い紫色へと移り変わっていく。

 チャリスは杖を構えて、構築式を展開し、先端に光を収束させ、辺りを閃光が包み込んでいく。

 周りにプラズマを彩らせながら、チャリスの杖の先端には黒く渦巻く球が出来上がっていっている。


「あふぇ♪ もっと…… もっとぉ、ギットギトにぃ」


 なんか、またヤバそうな…… むしろ、ブラックホールでも作り出してるような勢いだ。

 まぁ、また俺に反射的に撃たれても困るし、クマたんよ、さらばだ、楽しかった、お前のことは忘れないよ、アディオス。


「チャリース! 俺の攻撃に合わせて、そいつをクマたんに放つんだ」


 俺はクマたんに向けて、雷撃を放った。


「あふぇ♪ 魔キューー――」


 チャリスは、黒い渦に入ろうとするクマたんに向け、黒い球を放つ。

 これで、ワームホールを通る法則がクピディの魔力であるならば、チャリスの攻撃は通り抜けていきクマたんに命中するはずだ。

 黒い球は、地面を抉り取りながら黒い渦に向かっていく。


「――ン!」


 よしっ…… ん?

 黒い球は、黒い渦を飲み込み、巨大化していく。

 周りの空間を抉り取りながら、中心から地面が粉々に粉砕されていく。


 こ、こいつは、ヤベェんじゃ……

 俺は、急いでチャリスを抱き寄せにいった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る