第12話 チャリスはクマたんに出会いました
あるーひ、もりのなぁか、クマたぁんーに、であぁった♪
目をそっと瞑ると、素敵な童話が再生されていく。
あれがクマたん、確かに、よく見れば可愛いクマのぬいぐるみだ。
ツギハギだらけだけど、あれはあれで愛らしくもある。
ふふふ。もふもふしていて可愛いなぁ。
どこに逃げてもモニュん、モニュん、と現れてくれる、ある時は空気を抉り、ある時は木々を殴り倒し、ある時は地面に亀裂を刻み込み、黒紫の斬撃のようなものを四方八方に飛び散らせてはしゃいでいる。
モニュん、モニュモニュ、モニュん、モニュ「ゥニュ」
いかんいかん、現実とおとぎ話の境目みたいな状況に、ちょっとしたトランス状態になりかけていた。
分かったことといえば、チャリスの胸の柔らかさくらいのものだ。
「えっと…… あれがお前の言ってた、森の主? クマたんてグリズリーじゃないのか?」
「森の主は、グリズリー…… クマさんでしたよ? でも1週間前にかわいいクマたんに変わってたんですー」
1週間前だとやはりアスペラトゥスの影響だと思うが……
アスペラトゥスは俺が全力を出した結果引き起こされる事象…… 2回発動したが、どちらも世界の理に影響を与えてしまっている可能性がある。
1週間前から観測できていることとしては、魔族が可愛くなったりしていることだ。
俺はそれを総称して、『メルヘン化』と呼んでいる。
しかし、普通のグリズリーがメルヘン化したにしても、強さも変わるもんなのか?
今のところは、見た目とか喋り方とか名前がなんか可愛くなっているのは確認しているんだが……
「俺の知ってるクマさんは、ハチミツ舐めたりはするけどあんな黒紫の斬撃を飛ばさない……」
「ンフフ、そうですよぉ。森の主はクピディ様が色々と手を加えていますので、前と一緒で今のクマたんもツギハギだらけじゃないですかぁ。イジられてるんですよぉ。それに何よりクピディ様の魔力の香りが溢れ出ているじゃないですかぁ」
俺には魔力の匂いや味なんててんでわからない。
てか、クピディは本当に何者なんだ?
手を加えるって、そんなレベルでもない。クマさんはもはやクマさんじゃない。
いったい何のために?
――モニュん、プニュニュン
「ぅんんー、あひゃぁ、クマたんとリテラ様の魔力で溢れていて、チャリスはとても幸せ…… 気持ちいいですー」
あぁ、俺の左手だって、まるで自我が目覚めたように自立して動いている、吸い付いて離れそうにない。
クピディのこと、クマたんのこと、チャリスの感触のこと、俺の源泉の閾値は超えっぱなしだ。
だが、そろそろ盤面を変えていかないと、
「チャリス、お前、空は飛べるのか? 何かしら結界とかは?」
「えっとぉ、空は飛べますよぉ、結界はいつも作ってもらってるんですー」
「そうか、じゃ、離すぞ」
「ふへ?」
俺は、チャリスを決して離そうとしない左手に泣く泣く別れの挨拶をさせた。そして杖で構築式を展開、大きな木に引っ提げてあった布を引き寄せ、チャリスの服を仕立て上げていく。
白と紺の布がチャリスの周りを旋回しながら、洋服の形を成していく。
まるで、魔法少女の変身シーンのように…… まぁ実際魔法少女なんだが。
そこに向かって突撃してくるクマたんに、結界と雷撃で応戦していく。その様は、まさにSNS映えしそうな光景でもある。
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