第10話 チャリスはペシペシするのです
チャリスのあどけない笑顔を見ていると、前の世界のことを思い出す。
困ったもんだ……
「もう『ボカン』でもなんでもいいけど、チャリスは自分で魔力をコントロールできるようになるべきだと思うんだ」
「でも、魔力は生まれつき決まっているものですし、私はパンカーネアの生き残りとしては、『奇跡の失敗作』としてクピディ様に引き取られたのです……」
ふむ、確か魔力は……と。
俺は杖を出して情報を検索してみる。
この世界では、識字率はまだまだ低い、それに印刷技術もまだまだで、書物なんて大きい都市くらいにしかない。本を読むなんて、物好きくらいのものだ。
俺はこの世界の書物の情報は転生時、天使の協力の元ある程度網羅することができ、クラウドの作成にも成功している。
だからこそ大して頭が良くないのに大賢者をやっていけてるんだ。
「……まぁ、ここの世界の奴らはみんなそう言う。ただ、そうじゃない考えもある。説明できないこともあるしな。現にチャリスはさっき、俺が渡した魔力以上の魔法を発動してたじゃないか」
「あ、あれは、なんとも言えない至極の体験でした。でもあれはきっと『竜前のご褒美』なんですよ」
『竜前のご褒美』とは、ドラゴンの前では実力以上の力が出せてしまう、というこの世界での火事場の馬鹿力みたいな表現だ。
チャリスは、先ほどの戦いを思い出しているのか、頬が緩んできている。
「そう言う見方もあるかもしれない。だが俺の支持する考え方は違う。魔力は誰だって持てるもの。魔力は自分の源泉に溢れている。それを引き出すための欲求の理解により供給されるんだ」
「そんなこと……そういえば、クピディ様は、憎めば憎むほど強い魔法が撃てるって」
「魔族と分類されるものたちは、確かにネガティブな源泉を持つ傾向が多いと思う。これは社会構造とか文化の影響が大きいんだろう」
「社会構造、文化……」
「源泉も時と共に特性を変えるらしいし、大体複数の欲求が関連しあっている。自分の本質とも言える源泉の特性によって魔法にも独自性が生まれるんだ」
「魔力、源泉、欲求……」
今度は、チャリスの頭が『ボカン』としているようだ。
「まぁ……自分の本心を剥き出しにする感じかな」
「……本心? リテラ様は何なのですか?」
「俺は、『無知』に関することだと思ってる。その類によって、それが嬉しいんだ」
自分の中でもまだうまく整理しきれていない、検証しきれていないことばかりだ。
ただ、一つの仮説としてはいいだろう。
現に俺は、それで大賢者と言われるまでの実力を得ている。あとは再現性があるかどうかだ。
……いてっ
チャリスは何やら悩ましい顔をしながら、落ちていたヒモ状のもので俺をペシペシ叩いている。
「リテラ様は……痛いのが……こうすると魔力が増えて嬉しいのですか?」
「痛い……? いてっ、その鞭じゃないんです、チャリスさん」
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