第9話 チャリスはご満悦なのです
「……チャリスさーん、生きてますか?」
俺は、大の字に寝転がり、至る所から立ち昇る小煙を見ながら青空に向かって質問を投げかけた。
「リテラさ、ま……すごかったですぅ。結界固すぎです」
「そ……そう?」
結界は何回も張り直してた気がするが。
男というものは、筋肉といい、ナニカと固いと言われると誇らしくなるものだ。
俺は起き上がると少し離れたところにチャリスも寝転がっているのを見つける。
もはやチャリスは服着てるのかな? ってくらいボロ雑巾のローブはちぎれまくっている。
チャリスの「うち」と言っていたガラクタたちも、跡形もなく消え去っており、少し大きめの木と魔力注入機だけが、かろうじて残っているくらいだ……
「リテラ様ぁ!」
チャリスは起き上がると俺の方へと駆け寄ってくる。一歩一歩、その度に色々見えそうになりながら。
パンツは履いてたけど、上は付けてなかったらしい……ポヨンポヨンと、思ってたよりおっき……
俺は生唾を飲み込んだ。
「リテラ様! もう一回やりましょうよぉ! 魔力をぉ!」
チャリスは、座り込む俺の胸に飛び込んできて、柔らかいほっぺを両手でもちあげプニプニさせながら、まるで美味しいものでも召し上がったかのように、ご満悦の表情をして頭をフリフリして催促してくる。
よほど楽しかったのか、チャリスはとても嬉しそうだ。その可愛さとたまに触れてくるマシュマロからはある意味魔力でも出てるんじゃないかと疑ってしまう。
ただもう一回……か、魔力譲渡のたびに毎回あんな魔力中毒プレイみたいな背徳行為をさせられるのはごめん被りたい。機械自体もでかいし、この方法は再現性というか実用性が低い。
魔力以外の習熟度は、攻撃魔法に関して、すでにチャリスはトップクラスともいえるだろう。それに魔力は誰にでも平等で無限大だと俺は思ってる。
てか、なんか機械から煙も出てるし、魔力でもまた流そうものなら、爆発する未来しか見えない。
「いや、もうこれダメだろ、ボカンだよ」
「ボカン……ですか? それはリテラ様の頭のことでしょうか?」
……は?
……こいつ、なんで急に俺のことディスってきてんだ?
頭?
頭を触ってみると、なんかいつもより容積を感じる、チリチリする。
んぬあぁぁぁ、俺の頭! 見えないけど、きっと実験失敗ヘッドになっていそうだ……
「その髪型は、『ボカン』て言うのですね、ダメじゃないです。かわいいですよ」
チャリスは、俺のチリチリ頭を触りながら、ゾワッとする半笑いではなく、屈託のない笑顔でケラケラ笑っている。
その初めて見せてくれた笑顔にはなんだか負けてしまう。
2人しかいないこの空間で、髪型なんてどうでもいいことかもしれない。
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