第8話 チャリスはぶっ放すのです


「とりあえず、まずはチョロっと魔法を撃ってみなよ」


 まぁ、少し実力を測るくらいの魔力はあげれただろう。

 俺は、少し開けた草原に飛んでいき、杖を構えてみる。

 魔法をきちんと教えるなんて初めてだな。


 見れば、チャリスの杖からもすでに閃光が迸っており、かぶっているスッポンもカタカタ震えている。

 戦闘態勢万全じゃないか。

 ボロ雑巾みたいなローブに、スッポンみたいな被り物をしているチャリスはなんだかとてもしっくりきていて面白い。


 しかし、やはり魔力があれば、チャリスはそれを構築、発動するのは問題ないように見える。

 チャリスの構える杖の先端には、構築式が展開され、閃光が集中していっており、周りを赤黒いガスが包み込みながら旋回している。

 てか、滅茶苦茶本気のやつだ、それに並みの魔法ではない、こんなレベル王都にもいないんじゃないだろうか。

 イメージ力や構築式は努力量に比例するとはいえ、そこに至る道のりはそんな簡単なものではなかったはずだ。


「ぅむむむ、もう少しだったのにぃ。もー撃っちゃっていいん――」


 少し膨れっ面をしていたチャリスは、言い終わる前に魔法をぶっ放してきた。

 目の前に、赤黒い塊が瞬きする間に押し寄せてくる。

 うぉぉ、怖っ、すげぇ、レーザー砲の前でフリーキックの壁をしている気分だ。

 これは、結界だけでは心許ない。

 俺は、付与していた結界の発動とともに、杖の先に、構築式を展開、稲妻のベールを形成していく。


 赤黒い塊と稲妻のベールが激しくぶつかり、後から熱風が吹き荒れていく。

 激しい相対に至る所で小爆発が連鎖していく。

 ん……なんか、魔力量上がってきてないか?


「あぁあ、なんて綺麗……コ・ワ・シ・たくなるー」


 魔法のぶつかり合いの隙間から、たまに見えるチャリスはゾワついている目に奥深い深淵を蓄え、快楽の表情をしている。

 赤黒い塊の間隙から閃光が突き抜けてきて、さらに威力を増してくる。

 うぉっ……まだくるか……面白い。

 まだまだこの世界も捨てたもんじゃない、もっと真髄を、もっと本質を……

 俺は、さらに構築式を展開し紫とオレンジのプラズマのベールを重ね――


――ぞわっ……



「あふぇ♪」

 


 色とりどりのプラズマが入り乱れていき、穏やかだった森の中は別世界になっていった……

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