第7話 チャリスは魔力を受け取りたいのです
「だ、大賢者様だったとは、道理で、年は少し上そうなのに、喋り方や仕草は、年季が入っているなと思っていました」
チャリスは、誉めているのか貶しているのか、きっとこれが素なんだろう。
この世界での俺の年齢は18歳だけど、最初の世界から数えればもう結構いっている、精神年齢は、おっさんなんだ、俺は。
「とりあえず、魔法を撃ってみなよ」
「それでしたら、うちの近くにクピディ様との訓練場があるんです。そこなら色々ありますし」
チャリスは、スキップのような仕草で、小柄な体を動かしながら、嬉しそうに俺のことを手招いて先を走っていく。
クピディとずっと2人でいて、そのクピディも1週間前にはいなくなってしまった。
チャリスは寂しかったのかもしれない。
これまでの経緯はどうであれ、なんでもない、まだただの少女なんだ。
◇
「ここです、ここですよー」
「……ここ? どれ?」
『うち』って、家のことだったんじゃないのか?
俺の中の家という概念とは遠く離れた光景がここにはある。
なにやら怪しげな物体がたくさん転がっているだけで、建物的なものはなく大きな木がある以外はただのゴミ捨て場にしか見えないんだが……
「この機械でクピディ様に魔力を注入してもらうのです!」
チャリスは、現状をまだ飲み込めていない俺とは裏腹に、なにやらドヤ顔で色々説明してくれている。
なんだか便所のスッポンみたいなのを頭にかぶり、でかい掃除機のような機械の取っ手のところで魔法を打ち込むと、スッポンを被った相手に魔力が送られるとのことらしい。
「仕組みが全然わからんが、俺にもできるのかな? やってみるか?」
「いぃいんですか? 是非! 是非!」
チャリスは、待ってましたと言わんばかりにボタンを押してスッポンをかぶり、期待に溢れる目で俺のこと見て体を上下に揺らしている。
しかし、クピディってやつは何者なんだろう。こんなものが作れるなんて、レリンクア研究施設を思い出す。
「さて、じゃあ、やってみるぞ」
俺は、取っ手を掴んで魔法を発動してみる。
「あぁふ、なにこれ、す、すごいですー、クピディ様より……ん、ぁっ、もっと、もっと激しくぅ」
なんだか、むず痒いというか、抜き取られるというか、不思議な感覚だ。
というか、この子は、魔力に反応して、キャラが気持ち悪くなるんだろうか。
首元のローブを掴みながら身を震わせ、恍惚に目をゾワゾワさせ半笑いを浮かべているチャリスは、異常だ……
俺は、目を背けたくなって一旦魔法の発動を止めた。
「ぁぁあ、なんで途中でやめちゃうんですかぁ!? これからだったじゃないですかぁ」
……魔力譲渡にこれからもクソもないだろう。
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