カーテンコール

第9話 劇場部!!

 今日は、伸びに伸びた白百合家への劇場部からの歓迎の意味合いを兼ねた芝居披露の日。


 はっきり言って、無難な演目しか思い当たらなかった。


 なにしろまだ小さいトモくんもいるし、白百合のおばさんは臨月間近だし、おじさんは外科医だし(完全なる偏見)、それになにより愛しい糸子さんもいるわけだ。


 そんなわけで、演目は響の提案通り『シンデレラ』になった。


 オリジナルを尊重したため、ここで詳しく説明はできないが、とにかく響のシンデレラが可憐でかわいく、舜の王子様がそれはそれはかっこよく、そして意地悪な継母と妖精の二役を演じたおれはすっかり笑い者にされた。薫の語りも完璧で、それはもう拍手喝采の大成功。トモくんなんか、王子様になりたい、とかかわいいことを言ってくれたりした。


「わたくしでも、劇場部の一員になることはできますか?」


 糸子さんに聞かれたけれど、これはさすがの糸子さんでもごめんなさいだった。特例で糸子さんを加えてしまったら、ほかの女子がゆるさないだろうし、なにより糸子さんへのあたりが強くなってしまったら大変だ。


 そんなわけで、雑談後、いよいよおれは糸子さんのご両親に頭を下げた。


「娘さんと、結婚を前提にお付き合いさせてくださいっ!!」


 バラの花こそ持ってはこなかったけれど。ああ、芝居の後だとなんだか気まずい。


「まぁ、そのなんだ。きみはトモのことも助けてくれたと聞く。大学卒業まで結婚はさせないが、婚約者としてなら認めようじゃないか」

「本当ですか!? ありがとうございます!!!」

「その代わり、外科医になることを約束してくれないか?」


 はっと息を飲んだものの、それは想定内。すでにおれは勉強を始めている。


「はいっ。がんばりますっ!!」


 こうしておれと糸子さんは、ご両親公認の仲になった。


 つづく

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