第8話 山口、絶世の美少女と付き合うってよ
二学期に入り、糸子さんと同じクラスになれたため、おれの幸運は使い果たされたかに思えた。
正直に告白すると、もしや糸子さんは、おれが肺炎になってしまったお詫びとして告白をしてくれたのではないかという恐れもあった。
だが、彼女は親しげにおれに話かけてくれている。夢じゃない。本当におれは、糸子さんと婚約したんだ。
まぁ、まだおれがスマホを買い与えられていないため、家の電話で長話をしては母さんに冷やかされる、ということもあるが、糸子さんと過ごせる日々の穏やかさで、そんな冷やかしは水に流してしまっている。
で、教室の中ではというと。
「なになに? どーしたん?」
「だから、山口 努の話だよ。あいつ、白百合家のお嬢様とお付き合いをすることになったんだってっ!!」
「嘘だろぉー!? おれ、狙ってたのにー!!」
「お前、どっちを狙ってたよ?」
「あ、いや。その、な。」
「でも、長くはつづかないんじゃない? だって相手は白百合家のお嬢様だぜ?」
「そうそう、お嬢様だもんな」
人々は笑う。おれが不幸になるであろう未来を勝手に予測をして。あるいはその未来を突きつけるようにして。わかっている。そんなのはただのひがみやねたみでしかないことを。
なにげない侮辱を受け流すスキルを持つおれの特性も知らずに、のんきな顔をしてやがらぁ。
でもそんなみんなのでっちあげの予測なんてのはまったくなんの根拠もない。そして、おれたちの結末を知る者はそう多くはないであろう。
だっておれたちは、いつまでもいつまでも、末永くしあわせに暮らしましたとさ。めでたし、めでたしって、おわることに決まっているのだから。
つづく
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