おれたちは劇場部なもんで!!

第1話 音木学園中等部

 あー、あちぃ。


「こら、努。なまけてないで本を読め」


 ここは、音木学園中等部。初等部から大学までの私立の学園で、男女共学。


 おれは、窓の外に目をやり、海の中も暑かろうと想像しながら、ぼんやりとサーファーをながめていたところで親友の海原 薫に頭をチョップされた。


「なになまけているのさ? モブの分際で」


 手厳しいことを言うこいつは部内一、背の高い陸田 舜。


「キャー!! 舜様ぁー!!」


 うらやましいことに、舜にはうるわしい女性陣の親衛隊までついている。モテモテだな、おい。


「みんなー!! ぼくもかわいいでしょっ!?」


 将来は実家のお寺を継いでお坊さんになる進路がすでに決定している女子よりかわいいこいつは空野 響。だが男だっ。


 そしておれ。このイケメン三人に囲まれた中でモブ・オブ・ザ・モブのおれは山口 努。あ、今笑った人?


 で、おれたち男四人で中等部に進学した記念に劇場部を作った。え? 演劇部じゃないのか、って?


 演劇部はほらあれよ。なんかこう、体育会系な雰囲気あるじゃん? おれたちは、あくまで劇場部。呼ばれれば老人ホームでも介護施設でも病院にだっておもむきますから。


 もちろん無料で。


 ほら、芝居させてくれる場所を提供してくれたら、そこが劇場なのよ。


 うん? 女子部員はいないのかって? そこはほら、なんかもろもろ面倒くさくなりそうだからってことで、女人禁制にしたわけさ。大丈夫、モテないのはおれだけだから。


 そんなわけでなんとなくまだ物憂げに海へと視線を向けていると……!?


「子供がおぼれてるっ!?」


 尋常じゃないおれの叫びに、薫が身を乗り出した。


「サーファーは?」

「気づいてないっ!!」


 思ったら即行動。ここが一階でよかった。おれたちはお行儀悪く窓から外に飛び出し、学園の側の海に向かって走り始めた。


 つづく

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