全七編、長編劇 『コレットとエポニーヌ』 その五
心にやましいことのある紳士をたぶらかすことはできても、活動家の青年の心を拒むことができないコレットは激しく動揺し、明日も青年と公園で会う約束をしていまいます。
そこを、紳士に見つかってしまいました。
「すぐにここから引っ越すぞ」
紳士はすっかりコレットに熱を上げていました。大切に育てたこの子を活動家なんかにくれてやるわけにはいきません。
(ここを出たら、わたしはきっとまた、閉じ込められた生活を強いられることになるかもしれない)
それだけはもう嫌でした。そして、それを防ぐためには、活動家の青年の協力が必要でした。
「お願いです、お父様。どうかもう一日だけでいいからここに居させてくださいっ!!」
コレットのたのみなら断ることができません。紳士は少し興奮した様子でこう答えます。
「では一日だけだぞ」
こうしてコレットは、早朝会いに来てくれた青年に手紙を渡します。
『お願いです。どうかわたしを助けてください。わたしを育ててくれた男は
この手紙を読んだ青年は激しく戸惑います。活動家の身の上である自分では、警官を呼ぶことはできません。けれど、毒殺するのもためらいがあります。
そうして青年はひとつだけ思いついたことがあります。
「今日、革命を起こそう!! そうしてそのどさくさにまぎれて、彼女をさらいに行くしかない」
自分でこれしかないと信じた青年は、早朝から仲間の活動家たちをたきつけて、暴動を起こします。
そんな中で青年は、紳士に無理やり手を引かれているコゼットを見つけます。
コレットも、青年へとなまめかしく手を伸ばします。
強面の紳士が青年に見せた、はじめての苦悶の表情に、コレットの心は折れかけます。
(だけど、絶対に自由になってみせるわ。そのためなら、なんだって利用してみせる)
コレットの揺るがない想いに翻弄されていることに気づかない紳士と青年は戦います。
その隙をついて逃げようとしたコレットの前に立ちふさがったのは、なんとあの宿屋のテナルディエ家の娘、エポニーヌでした。
つづく
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