全七編、長編劇 『コレットとエポニーヌ』 その六
「あんたねぇ、あたしの家族を不幸に導いておいて、あたしの好きな人まで横取りするつもり!?」
エポニーヌは、青年のことが好きだったのです。これはチャンスととらえたコレットは、シナを作って泣き真似をします。ですが、コレットよりも歪んだ性格に育ったエポニーヌには通用しません。
「わかったわ。あの人のことはあきらめる。だからお願い。あの人としあわせになってっ!!」
コレットは大粒の涙を見せながら、エポニーヌの手を取り、青年のことをたのみます。
「あ、あんたがそこまで言うなら、あたしがあの人をもらうことにするわ」
(うっふふっ。これで彼は厄介払いできた。あとは紳士ぶったあの男だけね)
エポニーヌから離れたコレットは、実直そうな警官に紳士のことを指さします。
「あの男はわたしのお母さんを殺した殺人者です。わたしも、あの男の人質としてとらわれていたのです。お願いです。どうか彼を逮捕してください」
実直な警官は目を凝らして紳士を見ます。よく見れば、牢屋を脱獄したあの男だということに気がつきました。
青年はエポニーヌに、紳士は警官に引きずられて、コレットの前から去って行きます。
残った暴徒の最中で、コレットはようやく自由になれたと青空に手を挙げ、叫び出します。
「これでよかったんだわ。これで自由なのよ」
浮かれていたコレットは、もう一人の警官が近づいて来ることに気づきませんでした。
「来いっ!! 貴様、かわいい顔をして、活動家の一味だな。もしや、こいつらをその色気でたきつけたんじゃないだろうなっ。来いっ! 牢屋にぶち込んでやる」
「え? なんのことですの? わたしはなにも――」
「ええい、しゃべるな!! この魔女めっ。声色まで使って、憎らしいやつだ」
とんでもない言いがかりをつけられたコレットですが、どうせこの警官も手玉に取ってしまえばいいと、しおらしく従い、牢屋まで連れられてしまいました。
つづく
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