紙芝居 『七人の小人たちのケンカ』 その二

「やあやあ我こそはっ」


 謎の声と、噛み砕かれているはずなのに痛みのない体が不思議に思えて、おこりんぼは目を開けました。


「えっ!? みんな?」


 そこには、おこりんぼの言葉に怒って出て行ってしまったはずの六人の仲間が棒きれを持って、狼と戦っていました。


「どんな時でも仲間は仲間じゃ。安心せい」


 小人の医者は白衣が汚れるのも構わず、棒きれを振り回していました。ほかのみんなも同様です。


「みんな、ごめん。おれが悪かったよ」


 おこりんぼなのに素直にあやったことで、みんなは驚いて手が止まってしまいました。今度こそ、と狼がみんなに向かってきます。


 そこへ。一発の銃弾の音がしました。お城の王子様がスノーホワイトを連れて馬でやってきたのです。


 銃には勝てない。そう判断したのか、狼は散り散りに草むらの向こうに消えて行きました。


「みんな、怪我はない?」


 スノーホワイトは、王子様と結婚してもやさしいままでした。そのことがうれしくて、小人たちは泣き始めます。


「あらあら? どうしたのかしら?」

「どうしたのかしらじゃないよ。スノーホワイトこそ、どうしてここにいるんだい?」


 一同を代表して、おこりんぼが問いかけると、スノーホワイトは大事そうに抱えてきた大きな鍋を指さします。


「とてもおいしいビーフシチューを作ったの。みんなにも食べてもらいたくて来ちゃった」

「でも、どうして?」


 なかなか納得できないおこりんぼは、少しだけ警戒しています。


 小人というだけで、過去に何度か仲間をさらわれかけたことを思い出してしまったのです。


「わたくしは、ここにいるみんなに助けられたおかげで、今のしあわせがあるの。だから、恩返しがしたいの。わたくしだけがしあわせだなんて、あっちゃいけないわ」


 その思いやりにあふれた言葉に、小人たちはまた泣き出してしまいました。そこへ、王子様が提案してきます。


「狼のこともあるし、少しの間でもいいから、お城に住まないか? スノーホワイトもきみたちのことをとても心配しているし。今日はたまたまぼくらが来たからいいものの、次にいつ狼に襲われるかわからないし」


 王子様の提案を、みんなは断りました。七人の小人にとって、この森の洞窟こそが我が家であり、とても大切に思っていることに気づいたからです。


「そう言うと思っていたわ。あなた、みんなにあれをさしあげて」


 スノーホワイトが言うと、王子様は御付きの者から鞄を受け取って、七つのパチンコを取り出しました。球も袋いっぱいありました。


「これならいつでも戦えるよ。スノーホワイト、どうもありがとう!!」


 みんなは声を合わせて言うと、豪快に笑いました。


 この笑い声こそ、スノーホワイトが恋しかったものです。


「ねぇ、たまにはこの森に遊びに来てもいいかしら?」

「かまわないよ。でも、狼には気をつけろよ」


 わっはっはっはっと、みんなで笑いました。


 めでたし、めでたし


〈以上を持ちまして、紙芝居『七人の小人たちのケンカ』は閉演となります。ご観覧ありがとうございました。また、お帰りの際はお忘れ物のなきよう、足元にお気をつけてお帰りください〉


 ※閉演ブザー


 ☆☆☆


 つづく

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