紙芝居 『七人の小人たちのケンカ』

〈キャスト〉


 ※おこりんぼ……海原 薫


 ※スノーホワイト……空野 響


 ※王子様……陸田 瞬


 ※語り部……川崎 糸子


 ※狼、ほかの小人たち……山口 努



〈ただいまより、紙芝居『七人の小人たちのケンカ』を上演いたします。最後までごゆっくりご観覧ください〉


 ※開演ブザー


 ※紙芝居と語り部の話にあわせて、演者がセリフを言う。


 ☆☆☆


 昔々、それは仲のいい小人たちが七人、洞窟の中で暮らしておりました。


 小人たちはスノーホワイトを保護していたことから王子様たちから手厚いサポートを受ける予定でした。


 ところが、おこりんぼの小人は、あまりにも膨大な量の資料にサインすることにあきれ果てて、怒鳴り散らしてお城から飛び出し、ひとり洞窟に帰ってきてしまったのでした。


 おこりんぼがそう言うのなら、と、ほかの小人たちも次第にサインすることが面倒になってきて、お城から出て、洞窟に帰ってきたのです。


「また明日から洞窟で宝石掘りに逆戻りだな」


 おとぼけが場を和ませようと余計なことを言ってしまいました。


「あーあ、ねぼすけはもう眠ってるよ」


 そう言って、くしゃみは豪快にくしゃみをしました。


 ラッキーはなんとかこの殺伐とした空気を変えようとあははははと笑いますが、これが致命傷となりました。


 そもそも小人たちは、お金がないから同じ洞窟の中で共同生活をしていたのです。好きでいたわけではありません。


 もしあの時、おこりんぼが飛び出していなかったら、自分たちは今頃、ひとりにひとつのちゃんとした、清潔な部屋を与えられて、ゆっくり休むことができていたはずでした。


 しかも、うまくすればスノーホワイトの素敵な歌をいつでも聞くことができたはずですのに。


 小人たちは、お互いの顔も見たくなくて、洞窟を飛び出しました。ただひとり、すっかり寝付いてしまったねぼすけをのぞいて。


 行くあてはありません。城から飛び出してしまった時は夕方ですから、本来ならもう眠っている時間です。


 癇癪持ちのおこりんぼは、こうなってしまった責任を感じながらも、みんなに自分のせいだと責め立てられて、行き場のない怒りにかられ、盲滅法暴れまわりました。


 ですが、夜の森にいるのは初めてです。


 最初は怒りで気付きませんでしたが、どこからか動物の唸り声が聞こえたり、フクロウの鳴き声に飛び上がってみたり、それはもうたまらない屈辱と恐怖を感じていました。


「ああ、こんなところにてれすけがひとりでいたとしたら、とても心細いのだろうな」


 おこりんぼは少しずつ反省しながら、仲間たちのことを思います。


 それぞれの性格は違っても、本当はみんなのことが大好きなのです。


「でも、もう遅いや」


 ささやくおこりんぼの目の前には、目を真っ赤に充血させながら格別の光をたたえた飢えた狼の姿がありました。


 さすがのおこりんぼも、これには覚悟を決めてしまいました。


 つづく







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