第30話 紙芝居
結局徹夜して仕上げたさ。それもこれも、糸子さんに喜んでもらうため。
えーと、たしか特別にやさしくすればいいんだったよな?
ドライヤーで画用紙を丁寧に乾かして、ドキュメントファイルケースの中に慎重にしまう。ここでヘマをしてしまったら、努力は水の泡。
今日はまた久しぶりの天気で、気持ちよく学園に到着する。
え? いつも四人で登下校していないのか、だって?
そんなの、時間に間に合えばの話よ。おれたちそういうところ結構ドライだから、遅刻ギリギリまで待ってなんかくれない。それが野郎同士ってもんだろう?
そんなわけで、ギリギリセーフ!! すぐにチャイムが鳴ったから、薫はしかめっ面で怒ってる。せめて薫にだけは紙芝居を見せてやりたかったんだがな。
☆ ☆ ☆
古典の授業は眠気を誘う。千年も昔のイケメンの武勇伝を聞かされるモブの気持ちになってくれ。しかも五時間目。これ絶対に眠ってしまう。
休み時間の間に、みんなに紙芝居を見せたら、やればできるじゃん、と褒められた。やったぜ。
「努にしては上出来だよ」
なんか棘があるな、薫。まぁいいや。
うつらうつらしていたおれの横で、古典の先生がわざとらしく咳払いをした。
おっと。最近はセクハラだのパワハラだの騒がれて、昔みたいにチョークを飛ばしたりができないからな。先生も大変だ。
だが、こちとら徹夜で紙芝居作ったのよ。そりゃあ一旦は起きたけれども、やっぱり船を漕いでしまうよね。あーあ、先生ごめんなさい。ちゃんと後で復習しておきますので、ゆるしてください。
☆ ☆ ☆
そしてお待ちかねの放課後。今日は糸子さんがいつもの喫茶店『
つづく
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