家庭劇『舌切り雀と意地悪婆さん』

〈キャスト〉


 ※雀の大将……山口 努


 ※雀……空野 響


 ※心優しいお爺さん……陸田 瞬


 ※意地悪な婆さん……川崎 糸子


 ※語り部……海原 薫



〈ただいまより、家庭劇『舌切り雀と意地悪婆さん』を上演いたします。最後までごゆっくりご観劇ください〉


 ※開演ブザー


 ※語り部の話にあわせて、演者が芝居をする。



 ☆☆☆




 ある日、とてもやさしいお爺さんが、ケガをした雀を保護して帰って来ました。


 自分のことよりもかわいがり、大切に扱う雀に、意地悪なお婆さんは嫉妬してしまいます。


 あんなものがいなければ。


 あんなものさえいなければっ。


 嫉妬はやがて、お婆さんを炎のように包むようになりました。


 こうなったのはお爺さんのせいだ。雀なんか連れて帰ってくるから。


 お爺さんがすべての元凶だっ!!


 怒りをおさえきれなくなったお婆さんは、お爺さんを頭から斧で叩き殺してしまいました。


「違うんじゃっ!! これはすべて、雀がやったこと! あたしのせいじゃない。あたしじゃないっ!!」


 お婆さんの取り乱した様子に、雀はおそれおののき、森の奥深くにある、仲間のところに帰ってしまいました。


 そこへ、執念深く追ってきたお婆さんが後をつけてきました。


「お婆様、どうかお気を鎮めてください。万能薬のこの薬を、つづらの中に入れておきましょう。この薬をお爺様に振りかけてあげれば、お爺様は命を取り戻します。どうか、後生ですから、お爺様のことを助けてさしあげてください」


 怒りが収まらないお婆さんを鎮めるため、雀の仲間たちはお婆さんを丁重におもてなしします。そうしてようやくお婆さんはつづらを持って帰り、庭で死んでしまったお爺さんに薬を振りかけることにしました。


 するとどうでしょう!! お爺さんの傷はふさがり、元気に生き返ったではありませんかっ!!


「おおっ!! これは魔法の薬だっ!! もっとたくさんもらってくれば、若返ることができるかもしれないっ!! そうすれば、こんなうす汚ないお爺さんと一緒に暮らす必要なんてない。よし!! 今から森に戻って、薬をせしめてこよう!!」


 お婆さんは、お爺さんが止めるのも聞かずに、森に戻ってしまいました。


 つづく

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