家庭劇『舌切り雀と意地悪婆さん』その二
さて、森に戻ってきたお婆さんは、なにかのためにと持ってきた糸切りばさみを振りかざして、雀たちの舌を次々と切り落として行きます。
「あっははっ。おまえたちには奇跡の薬がある。あれをあるだけおよこしっ!! あたしは若返って、若くていい男と暮らしてやるんだっ」
「ですがお婆様。すべての薬を持って行かれてしまったら、仲間の傷を治してあげることができません。お願いですから、全部持って行かないでください」
お婆さんは、お爺さんがかわいがっていたあの雀の舌をも切ってしまいました。
「ふんっ。お前が悪いんだよ。あたしのお爺さんを横取りなんてするから」
お婆さんは、さっき雀たちが薬を持ってきた方向にずかずか入り込んで行きます。そこには、うつくしい着物や草履、大判、小判、それに目的の薬もありました。
「ようし!! せっかく若返るんだから、綺麗な着物も草履も大判小判も必要だな。えっへへっ。こんなもの、雀に用はないだろぃ!!」
お婆さんは狂気の笑顔を浮かべてうつくしい着物に袖を通し、ボロボロだった草履も履き替え、大判小判を袖や帯の中にどんどんつめてゆきます。
大きなつづらを見つけたお婆さんは、これ幸いとばかりに、あるだけの薬をつづらの中につめてゆきました。
「どうか、家に帰るまで、つづらを開けないでくださっ!?」
最後の雀の舌まで切り落としてしまったお婆さんは、意気揚々と家に戻ってきました。
「やい、お爺さん!!」
そうしてつづらを下ろしたお婆さんは、お爺さんを呼びつけ、つづらの中から薬をひとつ取り出しました。
「ほれ、お爺さん。さっさとこれを飲むんだよ。あたしのために、実験台になっておくれっ」
そう言うと、お婆さんは無理矢理お爺さんの口の中に薬を流し込んでしまいました。
「うわっ。苦いっ」
苦いのが大嫌いなお爺さんですから、後は自分で飲むと言って、こぼしながらごまかして飲んだふりをしました。
つづく
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