第22話 おれたちの部活動
劇場部は今日も元気っ!! ってなわけで、舜の誕生日だということを意識しないようにすると、逆に意識してしまうモブ体質なおれ。
そんなおれを見て、かわいい響がけらけらと笑う。ああ、男子校の天使よ。きみはなぜ男なんだい?
「もういいんじゃない? 舜もさすがになにかあるなと気づいてると思うし?」
やっぱりぼくって、かわいいだけじゃなくて、賢いよね、なんて同意を求められてしまうと、うん、そうかもしれないなんて返事を返してしまう。
押し切られるの得意すぎだよな、おれ。
「遅れてごめん」
部室に入ってきた舜は、いつもとは違って取り乱した様子。しかも、たくさんのプレゼントが入っているらしい紙袋を二袋は持っている。
「モテる男はつらいねぇー?」
響が舜をからかうのはいつものことで。でも二人は仲良しなんだぜ。
「男子校でモテてもしかたないだろう? それより響、さっきは花束をありがとう」
そう言って、紙袋から大事そうに取り出したのは、折り紙のバラの花束だった。
「おれのために、こんなにたくさん折ってくれるなんて」
「いいって。単なる趣味だし。お金もかかってないし」
そうは言うが、折り紙のバラの製作過程を見せてもらったことがあるけど、おれには無理だ。これは繊細な響じゃないとできないやつだ。
だからこそ、舜はよろこんでいるし、折り紙の柄もとてもうつくしくて、やはり特殊な紙が使われているような感じがする。
……すると、ますますおれがなーんにも用意してなかったことが気まずい。すまない。
「努はさ、いつも人の誕生日なんて覚えてないのに、今回は覚えていてくれてありがとうな。それだけで充分だよ」
くぁー。舜、お前ってぇやつは。さすが男子校のモテ男だなぁ。言うことが違うもん。
「でもやっぱり、ごめんな」
「気にするなよ。それで? 今日の台本は?」
「今日は、『舌切り雀と意地悪婆さん』!! この前の十三日の金曜日に書いたから、ちょっとしたホラーテイストがあるんだけど」
いや、『舌切り雀』は最初からホラーだし。婆さんが雀の舌を切るとか、正気の沙汰じゃないから。
「台本はすでに糸子さんに渡してあるから」
あれ? そういやおれ、糸子さんの連絡先知らないや。なんで薫は知ってるんだろう? まさか、な?
「よからぬことを考えるなよ、若者」
そう言って薫はおれの頭にチョップしたけど。ちょっとだけ、モヤモヤが残った。
つづく
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