モンスターを狩る者たち 3

 それからというもの、訓練場で支給された武器を使って武器の扱いを学ぶことになったが、想像以上に過酷なものだった。

 身の丈ほどある大きな剣を一振り。思ったよりも持てたことに驚いたが、やはりというべきか剣に振り回されてしまう。


「ちょっとー、なにやってるのね。もっとしっかり振らなきゃ」

「これめちゃくちゃ重いです……」

「はぁ……先が思いやられるのね」


 それからいくつか武器を変更して私でも扱えそうなのを探した結果、片手に小さな剣もう片方に盾を持った武器を扱うことになった。


「武器選びだけでだいぶ時間かかったのね」

「すみません……」

「まぁいいのね。ほら、さっさと依頼に行くのね」

「えっ、休憩なしですか?」

「そんなこと行ってたら上位にいけるのがいつになるかわからないのね。ほら早く」


 訓練場からすたすたと出ていくミーアさんを必死で追いかけた。

 ここの人たちは男性も女性も体力がすごい。でも、私も普通なら持てないような武器をもって振り回せているということは、何かしらこの場所の影響を受けているのかもしれない。それか、電脳世界はそういうものなのか。答え自体はどっちでもいい。大事なのは、私がここで何をすべきなのかだ。

 依頼の場所は私がゲートをくぐり一番最初に着た場所から、少し歩いた場所にある森だ。そこでキノコを採るのが最初の依頼。私みたいにハンターになったばっかの人は採取からこなすらしい。


「綺麗な森ですね」

「それなりに綺麗だけど、たまに強いモンスターが紛れてることもあるから気を付けるのね」

「え、そういうのってわからないんですか?」

「モンスターの動きを正確に把握出来たら苦労しないのね。でも、やばい時は観測球が笛を吹いて知らせてくれるから心配はあまりないのね」


 平然と話しているがミーアさんは大きな剣を小柄な体で担ぎあたりを見回していた。かなり異質な姿ではある。似たような光景は駅なんかでみたことある。小柄な女性がチェロだかコントラバスをハードケースに入れて背負っている姿と彷彿とさせる。

 

 マックスさんがミーアさんのこと評価していたのはお世辞でもなんでもなく、実際に的確にキノコを探したりモンスターを仕留める姿は確かに手練れと言った感じだ。なのに私は虫みたいなモンスターに追いまわされ、猪みたいなモンスターに追いかけられ、草食モンスターに頭突きをくらうなど、ハンターの素質は低いみたいだ。

 少しの間一人でキノコを探し、ミーアさんのところに戻ると川辺で釣りをしていた。


「何をやってるんですか」

「釣りなのね」

「あ、いや。それはわかるんですけど、なんで釣りをしてるのかなって」

「釣りはいいのね。静かにぼーっとやって誰にも邪魔されない」


 釣りをしているミーアさんの瞳はどこか虚ろというか、遠くをみつめている。釣りそれ自体に深い興味はないのだろう。だけど、こうしている時間がいまのミーアさんにとって安らぎに近い。

 だけど、それはあくまで逃避による安らぎ。本当にやりたいことではないんだ。本当にやりたいのは、上位の依頼をやること。


「ミーアさん、次の依頼に行きましょう!」

「そんな状態じゃまだまともに戦えないのね。雑魚くらいまともに狩れないと」

「大丈夫です! 私、やれますから!」

「や、やけにやる気に溢れてるのね……。そうとなれば今までにみたいに甘くはないのね。いいのね?」

「はい!」


 ミーアさんの表情に覇気が戻ってきた。

 力強く立ち上がり、別の依頼を受けに行こうとした時、釣りざおがしなりはじめた。


「ミーアさん、釣りざおが」

「なにこのしなりかた!? 大物なのね!!」


 こんな世界だから魚もきっと巨大なんだろうなと呑気していると、川が大きな飛沫をたて、本当に巨大な魚のモンスターが現れた。

 陸を歩行するためか足が生えており、パタパタをヒレを動かしている姿はとても奇妙だ。


「で、でかすぎですよ!!」

「あー、これちょっとまずいのね。木々を利用して逃げるのね!」

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