モンスターを狩る者たち 2
町は想像していたよりも大きく、工業的な施設と人が住む場所、市場などどれも活気に満ちている町だ。おそらく鉄の加工をしていると思われる施設からは時折勢いよく煙が吹き上がっている。
マックスさんは一度ギルドに寄ると言い、私を連れたままギルドへと向かった。中は男女問わずみんな防具や大きな武器を身に着けた人たちが、談笑していたりご飯を食べていたり、ボードを眺めていたりと自由に過ごしている。
人がいない長机の席に座り、マックスさんが戻ってくるのを待った。
「前、失礼するのね」
「あ、はい。どうぞ。……のね?」
どこかで聞いたことある可愛い声に特徴的な語尾。前を向くと、そこには淡く赤い髪の少女が疲れた表情で飲み物を飲んでいた。
「ミ、ミーアさん!?」
「なんでわたしの名前知ってるのね」
「いや、だって」
「はぁ、やっぱどうでもいのね。わたし寝る」
顔、声、話し方、どれもミーアさんと同じなのに、どうやらわたしの事は覚えていないらしい。それに、そばに武器を置いているということはミーアさんもハンターだ。
「悪い遅くなっちまったな。って、問題っ子のミーアもいるとは珍しいな」
「は?」
「おお、怖い怖い」
どうやらマックスさんとミーアさんは面識があるようだけど、マックスさんのようなVtuberはみたことがない。私が知らないだけかもだけど、周りの人たちもおそらく違う気がする。
でも、気になるのはミーアさんだ。前に会った時はVtuberとしてのキャラクターに準じた立場であったのにも関わらず、今は一人のハンターとして存在している。もしかしたらこことさっきまでの場所は全く違うのかもしれない。
「こいつはミーアって言ってな。いろいろとやらかす奴なんだ」
「なんだおめぇ、やんのかこらー」
「お前荒れてんな。ソロ帰りか?」
「どうせソロでしか依頼こなせないハンターですよーだ!」
配信でも語尾が抜けることはあったけど、ここまで清々しく抜けて荒れてるとは、よほど何かあるのだろう。
「あの、ミーアさんはなんで一人なんですか? ほかの人は数人で行動してしますよね」
「は? 喧嘩うってんの?」
「あ、いや。そうじゃなくて。一人でも強いならそれでも悪くないんじゃないかなって」
「確かにこいつの腕前はいいもんだが、ギルドの決まりで一人ってわけにはいかないんだ」
マックスさん曰く、上位の依頼をこなすためには、二人以上で依頼に挑まなければいけないらしい。一応、階級を上げれば一人でも行っていい許可をもらえるそうだけど、そのためにはまず、二人以上で上位の依頼をこなす必要がある。
ミーアさんの実力は上位でも戦えるほどらしいけど、あまり周りの人たちはミーアさんと組みたくないみたい。
「こいつはわがままなんだ。自分と同じくらいか自分より強くないと言葉はきつくなるし扱いは乱暴になる。んで、そんな話が広まったら誰も組みたがらないだろ」
「あーそういうことですか」
「納得してんじゃあねーよ」
トゲがある言葉なのに声質のせいでやけに可愛く聞こえてしまう。
「そうだ、白彩。お前、狩りは素人か?」
「は、はい。やったことないです」
「じゃあちょうどいい。ミーアの弟子になってやれ」
「えっ! 私がですか?」
「素人なんかこっちから願い下げなのね」
「まぁ、そういうなって。白彩はここにいるなら狩りの方法くらい知っておいたほうがいいだろ。それにミーアは一応弟子を取る許可はもっている。なら、その辺の知らないやつより弟子のほうが狩りはしやすいだろ」
ミーアさんはじーっと私の姿をみつめた。
「まぁ、悪い子じゃなさそうだし邪魔しなければいいのね」
「んじゃあ、決まりだな。白彩、なにか困ったことあればいつでも言えよ」
こうして私はミーアさんの弟子になった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます