第2話 君からもらったもの②

チコは、ヴィシュヌとラクシュミーが迎えに来る直前まで、ずっとご機嫌斜めだった。迎えに来たヴィシュヌ達を見るや否や、母のパティにしがみつく。


ヴィシュヌ「おや。困ったねぇ。。。」


パティは困り涙を呑み、チコをヴィシュヌ達に渡す。


ラクシュミー「ありがとう。大切にするわ。」


ヴィシュヌ「必ず立派な女神にして、またパティに会いに来るからね。」


チコはこうして、ヴィシュヌ夫妻と共に新しい世界へと旅立つのだった。


チコよりも先にヴィシュヌ達のグループに入っていたサムはチコが来るのをずっと待っていた。


サムは既に友人もでき、このグループの雰囲気はチコに合っているのではないかと感じていたのだ。とにかく、どの方も目上の方々である神々も、女神達も穏やかで優しく、サムを迎えてくれたからだ。何か困ったらすぐに、駆けつけてくれて、助けてくれたり。


それに、リーダーである、ヴィシュヌの優しい雰囲気がサムには有り難い存在だった。



ヴィシュヌとラクシュミーが皆の元に帰ってきた。そう、不安そうな表情のチコと一緒に。。。


ヴィシュヌ「ただいま。皆に紹介するよ。皆が待ちにまったチコちゃんだよ。よろしくね。」


女神達は少女のチコを見るなりすぐさま、駆け寄り、チコは女神達に取り囲まれてしまう。


「パティの娘ちゃんでしょ。ママに似てかわいい💞」


チコは母の名を聞くなり表情がかわる。


チコ「お母様を知ってるの?」


女神達はニコニコしながら、親しい事を伝えた。チコは、母の友人とも言えるような女神達に少し安心する。


「それにしても、とても可愛らしいわ💞💞」


チコを囲み皆キャキャッとはしゃいでいる。


その様子にヴィシュヌとラクシュミーはひとまず胸をなでおろす。


「チコ!」


チコは聞き覚えのある声の方を見た。


サムである。サムが目の前にいるのが中々認識出来ないチコ。暫くして、やっと我に返り、サムだと認識する。


チコ「サム兄!!」


チコがサムにかけよると「待っていたよ。」とニコニコとチコの頭をなでた。


チコの安心感は更に増す事は言うまでもない。


こうして、ヴィシュヌのグループでの生活が始まった。


神々も、女神もとても優しい存在なのがわかり、チコは少し安心する。


いや、優しい。。。そんな生半可なものではなかった。チコは神々、特に女神達から絶大な人気振りだった。彼女達には毎日のようにやれ、「これが似合いそう」だの、「これを着てみて」だの、自分達の持つ衣装やら、装飾品等を持ち寄り、それはまるでチコは着せ替え人形のようだったのだ。


チコは皆からの愛情をそのような形で、注いでもらっていた。


始めの不安な気持ちも無くなり、徐々に皆と溶け込んでいく。


その様子をヴィシュヌは日々嬉しそうに見守っていた。


ラクシュミー「よかったわね。まずは、何とか馴染めそうだわ。」


ヴィシュヌ「そうだね。」


(パティ。。。チコちゃんは大丈夫だよ。。。)そう心の中で呟くヴィシュヌだった。


チコは、他の女神達と共に女神になる為の学びが始まっていた。どんな事を学ぶかって?


それは、グループの活動に一緒に参加しながら、外の世界を知る事だった。チコが今まで母、パティと過ごした世界とは違い、地球に住む人々を知るという事だ。


ヴィシュヌ達のグループは地球人と呼ばれる人々の魂の向上を目指すグループであり、まだグループとして結成されて幾年かの若いグループだった。


人々の魂の向上を目指すにはまず、相手を知る必要がある為日々、人々がどのような事を考え、風習や、特徴等を観察していたのだ。国や、人種により様々に分かれており、姿すらも違いがある事を知る。


その様子をチコは勿論、サムも興味深く観察する。


チコ「地球人って、、なぜ、仲良しな人々とそうじゃない人々といるのかな?」


チコの目には地球人が争う姿がなぜなのか。全く理解できない。。。


それもそのはず、チコの育ってきた環境や、今自分のいるグループ内でも、互いに争う事や、喧嘩などあり得ない事だからだ。きちんと自分の気持ちや考えは相手に話したり、いや、話さずとも察する事すら容易なことなんである。


そんなチコの些細とも取れる疑問をヴィシュヌもその時一緒にいたサムですら地球人にとっての一番の問題点と捉えていた。




ある日、ヴィシュヌは皆を集めた。


そこは、広い部屋で、テーブルにはいくつかの品が並んでいる。それを各々自由に取り食を楽しむ。地球人で言うところのバイキングとでも言うのか。


で?その料理は誰が作っているのか?。。。


ヴィシュヌ「いろいろだよ。女神達が作ったり、勿論専属で作る方々もいるけどね。。。グループによりけりなんだろうね。」


そうなのか。。。何せ今現在のヴィシュヌ達に当時の事を尋ねながら、この物語を書いているわけで。俺すらも初めて知る事もあるというわけだ。


さて、話に戻ろう。


皆が和気あいあいと食事を楽しむ中、ヴィシュヌが口を開く。


ヴィシュヌ「皆、聞いてほしい事があるんだ。」


一斉にヴィシュヌに注目が集まる。それを確認したヴィシュヌは話を始める。


ヴィシュヌ「皆も知ってる通り、僕ら仲間はヒンズーの1種族だ。今までほんとに、仲間同士仲良く、助け合いながら、やってきたよね。そこで、そろそろ、新しい仲間を増やしたいと考えているんだよ。」


皆は、ヴィシュヌの話に耳を傾ける。


ヴィシュヌ「日本の神々、仏様をお迎えしたいんだ。」


「にほん、、、?!」


チコは勿論、サムも聞いた事もない名前だ。


神「日本って、、、あの八百万の神と言われている方々か?」


ヴィシュヌ「そうだよ。ヒンズーは仏教に通じていて、既に日本では、仏教が浸透して来ているんだ。だから、その仏教からの仏様達と日本神様をお迎えしたいんだよ。日本の神々は精神性が高いと聞いているし、僕らヒンズーの創造神であるブラフマーがすでに動き、日本との架け橋ができているんだよ。」


皆は息を呑む。。。


チコは隣にいた女神にわかりやすく、説明をしてもらっていた。


チコ(日本の神々様かぁ。。。どんな方々なのだろう。。。)


初めて聞く日本の神仏様にドキドキするチコなのである。


サムは、そのチコの表情から、チコから不安などは感じられず、安心する。


ヴィシュヌは、仲間の皆の様子から改めて、日本とのこれからの関わりに、決心を固めるのだった。。。








  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る