小さな贈り物

中筒ユリナ

第1話 君からもらったもの①

「さぁ、腕によりをかけて綺麗にするわね。」


「ありがとう。」

髪を結い飾りをつけてもらい、胸元には石で作られたキラキラと光る装飾品、綺麗な衣装を着たこの女性の名は、「チコ」だ。


ちょっと照れたような表情で椅子に座り鏡に映る自分を見ていた。


部屋を仕切る布地をめくり、一人の男性が入る。


「準備はできたかい?」


チコに優しく声をかけるこの男性、彼はこの国の長であり、またチコが所属するグループの中心的な神である。名は「ヴィシュヌ」。


ヴィシュヌ「チコちゃん、よくここまで頑張ってきたね。僕はこんなに、おめでたい日が来るなんて、凄く嬉しいよ。さぁ、表でサムが待ってるよ。綺麗なチコちゃんを早く見せてあげようね。」


ヴィシュヌからの言葉にチコは少し顔を赤らめ、嬉しそうだ。


チコの支度が整い表に出ると、サムが待っていた。より一層綺麗なチコを目の前に、照れたような表情で微笑む。


ヴィシュヌ「さぁ、皆。今日は二人の婚姻の儀式だ。祝福してあげてね。」


ヴィシュヌの言葉に周りからは、次々とお祝いの言葉が二人の耳に入る。


サムはチコと手をつなぎ、祝福の声が舞う中、新たに胸に誓う。


「この手を離すことなく、彼女を守り二人で使命を果たしていく。」と。。。


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時はさかのぼる。


語り手は俺、シヴァだ。


なぜ、俺、シヴァなのか?


とにかく作者の「中筒ユリナ」は中筒男命様の大ファンなんである。神様に向かってファンとは失礼ながら。いくつかの作品には、ほとんどと言っていい、中筒男命様をイメージする文面だったり、そこには必ず俺、シヴァが登場する。何故かは、作者の希望なのか、中筒男命様と俺シヴァが仲良しだかららしい。まぁ、事実仲はいいんだが。。。


すっかり、前置きが長くなったが、物語を続けよう。。。



サムは父オニキスの御霊により生まれし者だ。オニキスは、神であり、人々の為に教え導いていた。サムは父を慕い、父の仕事についてまわる。


サムが少年位に成長した頃、一人の女の子が誕生する。


名は「チコ」


チコは母であるパティの御霊により生まれし者だ。生まれたては人間で言うところの1歳かそこらだろうか。


我々の世界では人々のように赤子から生まれるのは稀である。大概はかなり成長した状態だったり、いろいろなんだ。


サムは、父に連れられ、生まれたばかりのチコに会いに行く事に。


オニキス「パティ。おめでとう。生まれたと聞いてね、息子も一緒だ。会わせておくれ。君の娘と。」


パティ「勿論よ。よく来てくれたわ。ほら、我が子のチコよ。サムも触れてあげて。」


チコは母の腕に抱かれスヤスヤだ。

その寝顔すらも愛おしく映るパティ。


パティ「さぁ、抱いてあげてね。優しくね。」


そう言うとパティはオニキスにチコを抱いてもらった。

オニキスは少しかがみ、息子のサムに見せる。


サムはスヤスヤと眠るチコの頬を指先で突いてみる。チコの頬はぷくぷくと柔らかく、サムはニコニコと笑って見せた。


パティは嬉しそうに微笑む。


それからと言うもの、サムはチコに会いにパティの元を訪れていた。小さなチコの手をとり、ゆっくり歩いてお散歩にでかけたり。


と言っても家のまわりを一緒に歩くだけというものだが、そこには、花が咲いたり、道行く人がサムとチコに声をかけてくれる。


「やぁ、サム。今日もチコちゃんと一緒かい。まるでお兄ちゃんだな。」


『お兄ちゃん』なんて、言われるとちょっと照れくさいような、誇らしげな気持ちになるサム。


(僕がお兄ちゃんになってやるからな。)

そんな事をサムは内側でつぶやいていた。



どれくらいの時が過ぎただろうか。


サムは少年から、青年へと成長していた。チコは元気な明るい少女になっている。


ある時、チコの元にビシュヌがやって来た。


ヴィシュヌ「やぁ、パティ。元気かい?」


パティ「ヴィシュヌ様。ようこそ。どうぞこちらに。」


見知らぬ男性にチコはキョトンとする。


ヴィシュヌ「チコちゃん。初めまして。。。いや、チコちゃんが覚えてないだけで、僕は何度かチコちゃんが小さい時に会っているんだよね。」


そんな記憶もない事を言われても困ったチコなんである。


パティ「ヴィシュヌ様。。。いよいよなのですね。私の役目もここまでなのはわかっております。」


ヴィシュヌ「大丈夫だよ。大切に育てさせてもらうからね。それに、お別れじゃないんだよ。いつでも、また会えるからね。」


母の薄ら涙をチコは見て、不安になる。何の話をしているのか、全くわからないチコ。


そんなチコを見て母パティはチコに話す。ヴィシュヌがとあるグループのリーダーであり、そのグループに入るべくチコが生まれてきた事を。


そして、母との時間もあとわずかでチコは、ヴィシュヌ達グループの仲間と共に成長していくという事を。


いきなりそんな事を言われても、戸惑うばかりか、受け入れられないチコだ。


なぜ、母と別れなければならないのか。訳がわからない。


チコ「サム兄は?サム兄とも別れなくちゃだめなの?」


ヴィシュヌ「サムはね、自ら志願してチコちゃんと一緒に僕の所に来るんだよ。」


幾日かしたら、迎えに来るから。とヴィシュヌは二人に伝え、立ち去った。


チコ「お母様!どういうことなの?なんで、私がヴィシュヌ様の所に行くの?」


パティ「それはね、チコの使命だからなんだよ。」


チコ「使命?、、使命ってなに?

なんなの?私、行かない!お母様と一緒にずっとここにいる!」


チコは部屋にこもり出てこない。


部屋の外からサムの声がする。


「おーい。チコ。いいもんもってきたよ。」


いつもなら、ニコニコでサムを迎えるチコ。だが、その時はサムの声すら寂しく、辛かった。


様子がおかしいと感じ母、パティに事情をきいたサム。


チコが閉じ込った部屋の前に来たサムは「入るよ。」と言い入る。


チコ「サム兄は知ってたの?私がヴィシュヌ様の所に行く事を。」


サム「うん。父さんからも、ヴィシュヌ様からも直接きいたんだ。」


チコ「じゃ、なぜ、反対してくれないのよ。嫌だよ、行きたくない!」


サム「チコ。。。」


サムは何も言えなかった。チコに何を言っても辛い事は変わりないとしていたからだ。ただ、チコの手を握り、泣いていたチコの頭を撫でていたのだった。。。

















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