俺とエッチしたい彼女の我慢がもう限界な件

第25話 二人、結ばれて……

「俺はもう我慢できない」

「私も……さすがにもう……限界」

「キスは逆効果だった……と思う」

「そうね。人間の欲望を甘く見ていたって、いま思ってるところ」

　二人で顔を見合わせて、意見をまとめてゆく。

「俺だけのことなら、どうでもいい。明日香との想いを遂げたい。だが、今生の別れになるのは明日香も辛いから……」

「ごめんなさい」

　明日香は、俺を責めることもなく、自分が悪いといわんばかりに謝ってきた。それが、俺の明日香への想いをさらに募らせる。

　むろん、生涯の別れになるのは受け入れられない。

　だがしかし……

「エッチしないのは、もう無理だ。俺も明日香も、我慢できない。人間だから」

「うん。私もそれはそう思う。でも高一郎が……どっか行っちゃうのは、それも耐えがたい」

「でも無理だ」

「うん……」

　二人が重い空気に包まれる。

　沈黙が落ちる。

　その雰囲気を打ち破る様に俺は続けた。

「だから考えた」

「え？」

「考えて考えて考えた。そして、一計を思いついた」

　そこまで言葉にしてから、部屋の隅で俺たちを気分よさそうに眺めていたクロぼうの胸倉をつかみあげる。

「ランボー、ムイミだよ。ボクの本体は異世界にあるからね」

「クロぼう！　女性にも『呪い』、かけられるか？」

「え？」

　っと、クロぼうは虚を突かれたという様子。のち、思案を見せてから答えてきた。

「数例は少ないけど、デキるよ」

「同時に複数人に『呪い』、かけられるか？」

「それは……例がない……ね……」

「まさか……」

　俺とクロぼうの様子を見ていた明日香が、驚きを声にしてきた。

　俺はその明日香に答える。

「その、まさかだ。俺と明日香、二人して『呪い』で一緒に転移する！」

「でもそんなことって……」

「俺は今までのクロぼうとの会話から『可能性がある』と思った。だから……」

　クロぼうをブンブン振って、問いただす。

「どうだ？　『可能』か？」

「むぅ。規定に例が……ない……」

　クロぼうがうめいた。俺が初めて見るクロぼうの焦り顔だった。

「ダメだと言ってもやってもらう！　やらなかったら、俺は明日香と身を投げる！」

　無論ウソ。俺は自殺するつもりはないし、明日香を巻き添えにする気もない。だが、クロぼう相手なら、効果はあると踏んでの脅しだ。

「お前、今まで失敗したことないってドヤ顔で言ってたよな。今回が初めての失敗になるわけだ。失敗できないんじゃなかったのか？」

　ふっと、挑発的に笑って見せる。

「失敗だ失敗。残念だったな」

「ぐぬぬ……」

　クロぼうが再びうめいた。

「失敗だ（笑）」

「失敗は……ぐぬぬ……」

　俺は、その懊悩しているクロぼうを放り捨てて明日香に向き直る。

「明日香。愛してる」

「…………」

「俺と一緒に異世界に来てくれ！」

　俺は言い放ち……

　それを聞いた明日香は、ぽろぽろと泣きはじめた。

「迷惑かける。この世界とも両親とも友達ともお別れだ。でもっ！」

　俺は一泊置いて、明日香に宣言する。

「俺は明日香と一緒に添い遂げたい」

「うん……」

　小さな、しかしはっきりとしたうなずきが返ってきた。

「これは俺からのプロポーズだ。明日香、俺と一緒になってくれ！」

「うんうんうんうん！！」

　明日香が、がばっと抱き付いてきた。

「高一郎！　好き好き好き好き大好きっ！！」

　明日香が、ぎゅうと俺を強く、強く抱きしめてくる。

「明日香っ！　ちょっと、苦しい。苦しい。」

「ご、ごめん。嬉しすぎて」

　明日香が俺を離す。

「俺から言っておいてなんだが……。ごめん、明日香。迷惑かける」

「いいの。高一郎と添い遂げられないのが一番無念だから」

　ふふっと、明日香が目元をぬぐいながら可愛らしく笑う。

　そして、床にへたっているクロぼうを叩き起こして、明日香に『呪い』をかけさせる。

　クロぼうはやむを得ないという様子で「ぐうう」とうめきながら明日香の足に肉球を乗せ、フラッシュさせた。

　そして……

　俺と明日香は互いに見つめ合い……

　熱い口づけを交わしてから……

　もつれながらベッドになだれ込んだ。