第24話 キスの日々

 今、ベッドの上で明日香と唇を重ねている。


 明日香の唇はマシュマロの様な弾力。俺の口の圧をクッションの様に受け止めてくれる。甘い味がして、鼻からはいい匂いが入り込んでくる。


 明日香の舌が俺の口内に入り込んできた。それがねっとりと触手の様に動き回る。口の中が蹂躙され、侵されてゆく。


 俺も明日香に合わせる。明日香と舌を絡め合い、明日香の粘膜に自分の舌をこすりつけ、唾液を混ぜ、すすり合う。


 明日香は積極的……というより、まったく容赦がなかった。


 解き放たれケモノのように俺の口をむさぼり、俺も明日香に答える。


 互いを求めあう行為が数分間が続き……


 ふうと同時に吐息して、口を離した。


「ちょっと休憩」


 そう言った明日香は、今までのじれじれむらむらが取れて、すっきりという顔をしている。


 俺も、明日香とキスできて、たまりにたまっていたモノをひといき発散できた感がある。


「続き。するわよ」


 明日香は呼吸を整えたのち、そう言って再び俺に向かってきた。


「続き……ですか……明日香さん!!」


「当然。こんなものじゃ全然満足できないんだから」


 明日香が、顔を誘うようなねだるような妖しいものに変える。


 確かに、俺もまだ明日香としたりない。


 俺たちは再び唇を重ねる。


 結局その日は一晩中、キスして休んでキスして休んで……が続くことになるのだった。





 ◇◇◇◇◇◇





 それから俺と明日香は事あるごとにキスをする間柄となった。


 登校途中で。昼休みの校舎裏で。そして、放課後、俺の家で。


 最初は二人ともキスした後はスッキリして、性欲を発散した満足感にひたれていた。


 しかし人間の欲望とは恐ろしいもので、次第にそれではしたりないと感じる様になっていった。


 足りない。


 キスだけではむらむらがとれない。


 もっと。もっと。互いが欲しい。


 獣の様になって、相手のカラダをむさぼりたい。


 キスしてもキスしても発散できない。


 むしろ逆に情欲が溜まる様になってしまったのだ。





 ◇◇◇◇◇◇





「あああああっ!!」


 校舎裏で、明日香が口を離したあとに、頭を抱えて天に吠えた。


「ダメっ! こんなんじゃガマンきかないっ! したいっ! 高一郎をめちゃくちゃにして、私もめちゃくちゃになりたいっ!!」


 そして走って逃げ去ってゆく明日香。


 俺も限界を感じていた。


 これを続ければ、いつか我慢が効かなくなって明日香に襲いかかってしまうだろう。


 明日香もそれを望んでいる。


 二人とも互いを求めているのに、それがかなわない。





 ◇◇◇◇◇◇





 この状況は、打破すべきだ。


 俺と明日香の為に突破しなければならない壁だ。


 最初から、無意識には分かっていた。


 明日香と『しない』で過ごしてゆくというのが無理なのだ。


 俺は、ぐっと拳を握る。


 そして考える。


 必死に、頭を総動員して、今までの短いながらの人生の経験をかき集めて、考える。


 数日後。考えに考えた末、俺は明日香を部屋に呼んで切り出した。

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