第20話 俺、場を収めるために脱ぐ

「クズ葉ッ!!」


 バンッと大きな音がして、準備室の扉が開いた。飛び込んできたのは、明日香だった。


「明日香さん。いいところで邪魔しにきましたね。さすがの嗅覚です。ですが……」


 ニヤリとした笑いを浮かべる一葉ちゃん。


「先輩は私の手にあります。動くと……先輩のモノ、私の中に入れちゃいます!」


「そんなに簡単にいくわけないでしょ。私があなたを拘束する方が早いわ」


「どうでしょうか? スルリとはいっちゃう気がするのは、私だけでしょうか?」


 ふふっと声をもらす一葉ちゃんと明日香が、にらみあう。


 緊張を破ったのは、明日香だった。


「そんなに高一郎と……したいの?」


「それはもう」


「でも、カラダのつながりだけであなたは満足なの?」


「残念ながら……」


「ながら……?」


「先輩のココロは今は明日香先輩にあります。だから……私と先輩はまずはカラダからです。カラダを何度も重ねているうちに情もわいてくるものです。オトコとオンナ。肌を重ねた相手には好意を持つようにできてます」


 ニコッと明日香に微笑む一葉ちゃん。


 そのセリフで、一葉ちゃんがお遊びではなく本気で俺をモノにしたいのだとわかって……ある意味、戦慄する。


「あなた……。怖ろしい女ね……」


「明日香さんと同じ生き物。オンナなだけです」


「でもだからって……高一郎を寝取られるわけにはいかないのっ!!」


 明日香が突進してきた。


「え?」っと、不意を突かれた様子の一葉ちゃん。


 明日香が一葉ちゃんの腕をつかみ、二人、もみ合いになる。


「くうっ! 私と先輩の『愛の営み』を邪魔しないでください!」


「愛の営みじゃない! 全然違う! 邪魔しなかったら、あなた無理やり高一郎を〇しちゃうじゃない!」


 もみくちゃになって、取っ組み合いを始める二人。


 拘束されているとはいえ、このまま見ているわけにもいかない。


 明日香と一葉ちゃんは本気の本気で、そのうちどちらかが怪我してしまうだろう。


「やめてくれっ!!」


 俺は二人に向けて大声を出した。


「二人ともやめてくれっ!! 俺は、明日香にも一葉ちゃんにも怪我して欲しくない!!」


 二人が動きを止めて俺を見る。


「でもこのクズ葉を止めないと……」


「明日香先輩が邪魔するから……」


「とりあえず今日のところは俺に免じて場を収めてくれ!」


「「でもっ!」」


 二人は納得いかない様子。


 俺はどうしようかうーん……と思案してから、二人に提案した。


「なら……俺のハダカ見せるから、それで今日はチャラにしてくれ。乱暴はやめてくれ。一葉ちゃんも無理やりはダメだ」


 我ながらメチャクチャな提案だとは思ったが、二人とも俺を目当てにしているなら効果があるか? と思ったので言ってみた。


「……わかったわ」

「……わかりました」


 驚いたことに二人とも納得して、今までの勢いが嘘だったように大人しくなったのだ。


 そして拘束を解かれた俺は、約束通り、二人の前で上半身ハダカになった。

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