第11話 対決は続く……(明日香視点)
「嘘ですねっ!」
「え!?」
私は慌てた。
何か……マズい、バレるような事をいった?
私と高一郎はこの学園に入る前からの付き合いで、二人の関係は学園内では有名な話だ。
そりゃあ、それが気に入らないという連中もいることはいるのだが、その人たちが私と高一郎の間柄をどうこうできるわけではない。
私と高一郎は、陰口やSNSの誹謗中傷程度でどうこうなるという程度の間柄ではない。
中学から今まで、何度も修羅場を潜り抜けてきたパートナーなのだ。
でも……と思い直す。
私と高一郎の関係に、他の女が絡んできたことは今までなかった。
そういう点では、この後鳥羽一葉という波風は、初めての経験だ。
私と高一郎の関係に隙があるとすればその一点。
「嘘ですねっ!」
一葉がまた私の心を揺さぶってきた。
「確かに森野さんと先輩は恋人同士ですが、男と女の関係にまでなったというのは、嘘ですっ!」
ぐぬぬ……
私は奥歯を噛みしめる。
「どうして……わかったの……」
思わず、うめきを漏らしてしまった。
「やっぱり、嘘だったんですね」
「え……?」
「やっぱり思った通り嘘でした」
ふふっと、小悪魔のごとく微笑む一葉。「やられたっ!」と思ったが、ここでたじろいではいけない。なんとか精神を立て直そうとする。
「謀った……わね!」
「謀りました」
一葉は、ニヤリとした顔を見せた。
「宣言しましょう。私、高一郎さんを寝取ります」
「なんですってっ!」
「私は高一郎さんと一年間ですが一緒にこの図書室で過ごしてきました。そして、高一郎さんの好きな物とか性癖とかを研究してきました」
「ぐうう……」
「高一郎さん。優しいんですが、逆に言うと優柔不断というか、女の子相手に邪険に出来ないというか、押しに弱い部分があって。だから私、高一郎さんをNTRます!」
「ぐぬぬ……」
甘く見ていた。後鳥羽一葉、おそるべし。
ただの上級生に人気のある、守ってあげたい系の後輩一年生だと侮っていた。
だがその実態は、自分のエゴを押し通すことに躊躇がない、ある意味我が儘で自我を全開にしてくる女性だったのだ。
これは……油断できない。
高一郎の気持ちは私にある。それについては自信がある。
でも、今、問題を抱えてて、ちょっとだけすれ違いを起こしている。
そんな私と高一郎の隙を見計らった様についてきた女、後鳥羽一葉。
これは……性根をすえてかからないと高一郎をNTRれかねない……と、少し不安になった。
私の前に現れた、高一郎を巡る初めてのライバル。
高一郎とはやがて結婚して、いっぱいエッチして子供たくさん作って、幸せに過ごしてゆくのだと思っていた。というか、それは確定事項だと思ってた。
だから……
私は自分の気持ちを引き締める。
一葉と目線でバチバチと火花を散らして、今日の所はお互いに引き下がったのだった。
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