第6話 俺、明日香に責められる

 明日香から顔を背け、ぜーぜーと洗い息を吐く。


 吸って吐いて……吸って吐いて……


 俺っ! しっかりしろっ! 俺っ!


 と、自分の理性を立て直す。


「きょとん」としている明日香に向き直り、俺はしどろもどろになりながら、言葉をなんとかしぼりだす。


「今日は……ちょっと調子が悪くて……」


「……え?」


「いや。いやいやいや。別に明日香とスルのが嫌とかじゃなくて、俺もものすごく明日香としたいんだけど今日はちょっと……」


「なら……。明日の放課後……」


「いや。いやいやいや。明日もちょっと……」


「なんなのよっ、それっ!」


 明日香はあからさまに不満で気分を害したという大声を出した。


「そんなに大きくしてるじゃないっ! それで言い訳通じるとでも思ってるの!!」


「すいませんごめんなさい。何というか……これにはどうしようもないワケがあるのでして……」


「どうしようもないワケって?」


「……ちょっと、言えないワケでありまして……」


「なに? 何か……身体に問題が……あるの?」


「いえ。そういうわけじゃないです」


「なら、精神的に何か?」


「いえ。それも違って。病気とかでは全然なくて。スルことは出来るんだけど、その後に問題が発生して……」


「赤ちゃんできちゃうとか? そのくらいの覚悟はしてるわよっ! うちは大らかな家庭だし、お金もあって、両親も早く孫が見たいってくらいだからぜんぜんオッケー。むしろ望むとこ」


「マジですかーーーーーーっ!!」


「マジもマジ。大マジ。昨晩は予行演習というか、する順番はどうしよう、どうしたら高一郎が喜んでくれて私も楽しめるかなって寝ないで頭の中で考えてたのに!!」


「すごいセリフを吐きますね、明日香さん……」


「シャーラップッ!!!! この猛りに猛り狂った情動、どうしてくれようか……」


 ぐぬぬと、明日香が拳を握りしめる。


「とにかく、問題がないなら、今日は絶対に最後までするわよっ! 反論も抵抗もなしっ!」


 問答無用という口調。上半身ブラ姿で腕をぶんぶん降りまわす。


「さっさと脱いで出しなさい!」


「出しなさいって……。順序があるんじゃなかったのかっ!?」


「細かい事はどうでもいいのっ! 私はもう準備オッケー万端。最初だからスムーズにいかなくて当然。回数重ねてるうちに慣れてくるって、専門書にも書いてあった!」


「専門書ですかっ、明日香さんっ!」


「そうよっ! 私がこの日をどれだけ待ち望んでたと思ってるのっ!! 言い訳なんか聞かないわよっ! 覚悟決めなさいっ! 逃がさないわよっ!!」


「俺の命に関わるんだっ!」


「私だって高一郎との関係に人生かけてるわよっ!」


 鬼の様な顔をして関係を迫ってくる明日香。


 いや……俺もしたいんだ、もちろんものすごく


 でも……したら死んじゃうんだ、呪いで。


 そしてそれを明日香に言うことはできない。


 うええええーーーーーーんっ( ノД`)!!


 俺は明日香の部屋を飛び出した。


「あっ。こらっ。待ちなさいっ!」


 後ろから明日香の大声が響いてくる。


「この火照りきったココロとカラダをどうしてくれるのよーーーーーーっ!!」


 その明日香の絶叫を後にして……


 俺は明日香の家から逃げかえったのだった。





 明日の学校……どうしよう……


 今日の夜も眠れない……

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