第5話 そして明日香の家で……どうしよう

 そのクロぼうとの遭遇の後。


 クロぼうを家に連れ帰って色々会話して探りを入れた。成果はなかったが。さらに脅して透かしてなだめて頭を下げて『呪い』を解くように頼み込んだ。


 しかしクロぼうは頑として首を盾に振らなかった。


 さらに加えて他の人に喋ったら、例えば明日香に話したら、「明日香ちゃんもたたじゃすまないかもね」と不穏な脅しをかけられてしまった。


 とにかくクロぼうと『呪い』を何とかしなくてはならないので、クロぼうを家に泊め於いて。


 翌日の放課後、明日香の部屋にお邪魔したのだ。





 明日香とテーブルでお茶をした後、二人でいい雰囲気になって、ベッド上で密着して座っている。


「ねぇ。私たち、やっと結ばれるのね……」


 万感の想いという口調で、明日香が声を出した。


 その明日香を見る。


 頬が火照っていて、顔が上気しているのが傍目にもわかる。


 それもそうだろう。そういう場面だ。


 互いに想い合っていた恋人同士。その二人が『初めて』を迎えるのだ。それも思春期まっさかりのお年頃。性に関しても好奇心ありありの、男子と女子。


「私、いま、凄くドキドキして興奮してる……」


 はぁ~と甘く吐息した後、密着している俺に熱い眼差しを向けてくる。


 本来なら、俺も本能の赴くまま明日香に抱き付きたい所だ。


 だがしかし。昨日、明日香と別れた後に状況が変わった。それはもう、驚天動地の変化であって、俺は頭を抱えて昨晩は別の意味で眠れてない。


「学園では優等生として振舞ってるけど、実はホントは自分がすごくエッチな女の子なんだって自覚してるところ……」


 ダメッ!


 明日香さん、そんなセリフ言っちゃダメっ!


 俺の『命』がかかっているのだ。


 なのに、ゆらりと明日香に心が傾くのは何故なのか?


 俺の『命』の火を消し飛ばそうとする明日香の色気、おそるべし。


 ――と。


「ねぇ」


 明日香は俺を見つめたまま、自分を披露する様に着ている制服のブレザーとブラウスをゆっくりと脱いで、上半身をあらわにした。


 綺麗な、シミ一つない肌。白くてシンプルなブラが、その大きく豊かな膨らみを圧しつけている。


 うっ。


 なんという威力。


 俺は、言葉どころか息すら忘れて、吸い付けられたように目を離せない。


「どう? 私は?」


 明日香が俺の手を取った。


「高一郎とひとつになるために育ったんだって思ってもらっていいわ」


 そして自分の胸にそれを押し付け……。


「あっ……」


 明日香が、感じてしまったという声を吐く。


 のち――


「今日は理性を解放して……私のことめちゃくちゃにして」


 明日香が両腕を俺の首に絡めてきた。


 そして俺の前で目をつむる。


 唇が近づいてくる。

 

 ダメ。


 ちょっと、明日香さん、ダメッ!


 このまま進むと、明日香さんと唇を接触させると、たぶん『命』がかかっているとわかってても止まらない。止まらない自信がある。


 だから俺は、必死に残っている理性を振り絞って……


 二人の唇が触れあう……という所で……


「ああああーーーーーーっ!!」と叫んで、明日香を引き離した。

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