第2話 プロローグ その2

 明日香から顔を背け、ぜーぜーと荒い息をする。


 吸って吐いて……吸って吐いて……。呼吸を整えてから、自分自身を叱咤する。


 俺っ! しっかりしろっ! 俺っ!


 のち、明日香に向き直ると、狐につままれた様に「きょとん」としていた。


「え……。ええと……」


 俺はしどろもどろになりながら、言葉をなんとか紡ぎ出す。


「今日……ちょっと元気がなくて……」


「……え?」


「いや……今日はちょっと調子が悪くて……」


「…………」


「いや。いやいやいや。別に明日香と『する』のが嫌とかじゃなくて、俺も物凄く明日香としたいんだけど今日はちょっと……」


「なら……。明日の放課後……」


「いや。いやいやいや。明日もちょっと……」


「なによ、それっ!」


 明日香はあからさまに不満で気分を害したという声を出した。


「高一郎! そんなに大きく硬くしてるのに、調子が悪いってどういうことよっ!」


「いや。いやいやいや……。なんというか俺も初めてで……どうしたらよいのかわからないからちゃんと勉強してからじゃないと上手くできないというか……」


「そんなのどうでもいいじゃないっ! 突撃あるのみでしょっ!! ここまで私がどれだけ想いを募らせてきて我慢してきたと思ってるのっ!!!」


「それはその……」


 もはや取り繕う言葉がなかった。


「ごめん。今日は帰る」


 俺はもうどんな言い訳も通用しないと理解して、明日香の部屋から出ようと立ち上がる。


「逃げるなっ!! この弱虫っ!!」


 後ろから声が響いてきたがどうしようもない。


「この火照りきったカラダどうしてくれるのよっ!!」


 俺は明日香の部屋から逃げ出して廊下から階段に向かう。


「絶対、あきらめないわよっ!!」


 その明日香の大声を後に残して……


 うええええーーーーーーんっ( ノД`)!!


 と、俺は明日香の家を飛び出した。





 出来ないのだ!!


 いや、シたら死んでしまうのだ、この俺が!!


『夢魔』の『クロぼう』に「明日香とエッチすると死ぬ『呪い』」をかけられてしまったからだ!!





 これが俺たちの『苦難』というか『夫婦漫才?』の始まりだった。


 この俺たちにとっての『難題』はこうなってああなって、俺が予想もしていなかったエンディングを迎えるのだが……


 始まりは一昨日に遡る。

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