05話 料理をしなければいけないの?
悩みごとは色々あるが、ひとつだけ直したいものがある。
ひとり暮らしが長かったせいなのか、私は自覚するほど独り言が多い。ひとり暮らしのせいではないかもしれないけれど。
部屋でひとりっきりならまだしも、外に出かけてもしてしまう。
「さあて、お昼にしようかな」
って、またやってしまった。もう治らないか。もし結婚したらどうしよう。といっても相手がいる訳ではないので、独り言はもう諦めるしかないかな。
貧乏なのにいつもコンビニ弁当。自炊が面倒くさいだけなんだけど。
書いた小説がひとつ何故か賞を取ってその上売れたので、それなりのお金が入ったから弁当で済ます。が、それだけであとは鳴かず飛ばず。金はもう直ぐ
「もうどうでもいいや。弁当何にしょ……あ痛っ!!」
いきなり背後から殴られた。
デコピンされたくらい痛い。今度はなんなんだ。
なんか仁王のような顔をして鎧を着た奴が浮いている。
怖そうな顔だけど、ちっさい。大人の男性の手のひらくらい? 男性の手のひらなんていつ見たっけ。
しかしこいつはちっさ過ぎてあまり怖くないかも。
「あのー。どちら様で」
「それはこっちの
先住民が居るなどとは聞いていないのだが。
猫又はどこ行った。肝心な時にいてくれないとただの役立たずではないか。
「何を
また殴られた。その上こいつにも馬鹿って言われた。
「だから殴らないでって。で、貴方はどなたでしょう」
「
神様までいるとは……しかし何かの本で見たような。
「ああ、台所とかの火のある所に勝手に住んで……」
また殴られた。勘弁して欲しい。
「勝手に住み着いているのではなく
「その神様が私になんの用があるのでしょう」
うわ、殴られる。 防御! 失敗!
「貴様、引っ越してきてから一度もまともに台所を使っていないだろうが」
「あー。お湯も電気ケトルで沸かしますし、台所に用があるのは冷蔵庫とオーブンレンジくらい……使ってないですねえ」
「何故料理をしないのだ。火を使え。せっかくお前が住み着いたのに、空き家の頃と変わらんではないか」
「だって、面倒くさい……ってもう殴らないで」
これ以上阿呆になったらどうしてくれるのだ。
「よう、
あ、猫又。助けて、抱っこしてあげ……逃げられた。
「確か3日で逃げ出したやつ以来かな。一応ラーメンを作ったから礼を言おうとしたのだが」
それは逃げる。普通なら逃げる。
私は3年縛りが痛すぎて逃げられない。
「そういう事だ。可愛そうだから少しは台所で煮炊きしたらどうだ」
猫又があっちの味方になってしまった……
「そういわれても。大抵電子レンジで間に合うし、ラーメンはカップ麺でいいし、レトルトカレーとかはご飯を炊くのが面倒くさ……うわっ」
今度はよけたぞ。頑張れ私。
「じ、じゃあたまにはスーパーでひとり鍋セット買ってきます。火にかけるだけだし」
「仕方あるまい。度々それを食え。しかし見ていればお前、野菜が足りてないぞ。野菜が沢山入っているのにしたがいい」
説教までされてしまった。
「とりあえず挨拶ということでこれで帰るが、儂が台所からいなくなるとは思うなよ」
この物件は神様の監視付きか。でもセキュリティにはなんの役にも立ちそうない気がする。
「俺も思ったんだが、弁当食うならサラダくらい買え」
「う、うう」
猫又にまで説教される自分が情けない。
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