03話 ここはマンション5階ですよ?

 「何とか暮らせる程度に片付いたね。3日もかかってしまったよ。しかしあのアマビエさん、仕事のネタにしてやるからな」

 と、独り言独り言。どうしても出てしまう。

 とりあえず下のコンビニでお昼のべんとうでも買うか。

 

 「あー。エレベーターがあって楽だな。そんなに出かけないけど」

 さてお昼。お昼の弁当、唐揚げ弁当。しかし朝もサンドイッチ買ったな。貧乏なのに。でも自炊はどうも。

 「ニャー」

 ……猫? 

 「ニャーニャー」

 ベランダか?

 でもここは5階なのに。謎だ。エレベーターに乗って来たとしても、何故ベランダなんだ。

 「どうでもいいから早く中に入れろ」

 ……今度は幻聴か。誰かの声が聞こえたような。ベランダから。

 「ええと……」

 ベランダの方を見たらいつの間にか部屋の中に猫がいた。黒猫だ。

 「……何故我が家の様な顔をして勝手に入ってくる。ここの家主は私だぞ」

 「うるさい。黙れ。ここは俺の縄張りだ。新入りのくせに生意気だな」

 猫が喋った……しかしこの猫、尻尾が2つあるような。

 「何をジロジロ見ているのだ」

 「何で尻尾が2本……」

 「黙れ。猫又だから当たり前だろ。知らんのか」

 「猫又」

 ええと猫又というのは猫の妖怪のアレの事か?

 「猫又と言うことはお爺ちゃん?」

 「大きなお世話だ。とにかくここは俺の縄張りだからな」

 無茶を言う。なんなんだ。家賃は私が払っているのだ。

 「つかぬ事を聞くけど、3日前アマビエさんがお風呂から出てきたんだ。これってどういう事?」

 「お前はここが妖怪の通り道と解っていて引っ越してきたのでは無いのか」

 「よ、妖怪の通り道って」

 「お前は馬鹿か。言葉どおりだ。だから霊気が強くて心地いい」

 いや、妖怪が心地いいと言われても。

 「あの、ちょっと疑問なんだけど」

 「なんだ。特別に答えてやろう」

 なんて生意気な猫……じやなくって妖怪だ。

 「妖怪の通り道ということは、アマビエさんやあんたのような妖怪がここに出るという……」

 「当たり前だろう。しかしお前は何という言葉使いをするのだ。俺をあんたと呼ぶな」

 どうしてくれよう。この猫又め。

 ただ、喋られる奴がいるのなら便利かも。いや、そういう問題ではない。これからどうしたらいいのか。3年縛りだぞ。やっていけるのか。

 「まあ、俺は霊気があればいいのだから、食事の心配はしなくていいぞ」

 なんだと。

 「もしかしてここにいつく気なの?」

 「いつく気も何も俺の縄張りだと行っただろうが。お前の頭には脳みそが無いのか」

 なんてことを言う。口の悪い奴だな。

 「一応物書きが職業だから脳みそはあるよ。というか無い人間なんていないと思うんだけど」

 「当たり前の事を言うな。そのうち誰かに脳みそを吸われるぞ。警戒心の無い奴だな」

 脳みそを吸うだと。そんなのも出てくるのか。それじゃあ家賃1万円でも高すぎる気がするんですが。

 「とにかくだ。俺の出入りを邪魔するな」

 そういえばここはペットも可ってなっていたような。

 「お前、特別に住まわせてやるから安心しろ」

 勝手に同居人、じゃなくて同居妖怪が出来てしまった。

 どうなる、私の生活は。

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