02話 お風呂はとても気持ちいい?
ダンボールの山、山、山。
殆どの中身は本である。我ながら多すぎると思う。
一応、私は物書きという職業なので、資料集めをしているうちに本だらけになってしまった。
引越し屋さんは文句も言わずに運んでくれた。これがエレベーターの威力か。
「まあ、荷物は後でいいや。とりあえず寝床を確保しないと」ということで組み立て式ベットを何とか用意しなければ。恥ずかしながら私は不器用なのだ。
そしてマットレスと布団。どこ行った。隣の部屋の何処かに埋まっているだろう。
あ、あった。何でダンボールの山のてっぺんにあるのだ。私は自慢じゃないが背が低い。その上力も弱いのに。
「次は机はだけど、あんな所に……」
とりあえずテーブルでいいか。この部屋に置きたいんだけど、このダンボールの山。絶望した。
しょうがないからあれを片付けた後向こうに持っていくということで、ベットの横に置くことにしよう。
しかしたったこれだけで汗だくとは。仕方がない。お風呂を掃除して汗をながすか。
「風呂掃除で力尽きるとは。これもお風呂に入るためだ。仕方がない。あ、着替え。それとタオル」
寝間着はTシャツでいいか。しかしシャツと下着とタオルとかはいったい何処だ。
「しょうがないなぁ。この山から発掘しなければ」
散々ダンボールを動かして、何とか見つけることができたのだが、今日はこれで限界。勘弁してくれ。
「あー。疲れがとれるわ」
思ったより広いから足が伸ばせられる。気持ちいい。
「む。なんだあの泡。私はおならなんかしてないぞ」
私の両足の間から泡が出ている。が、なんか出てきた。
「ひ、ひい。もしかしてこれはあのホラー映画の」
思わず後ずさろうとしたがここはバスタブの中。そしてそれはホラーのとは違った。
「そ、その姿はもしかしてしばらく前に流行ったアマビエさん?」
いきなり顔面にお湯をかけられた。
「ちよ、ちょっと待ってよ。勝手に出て行かないで。あああ、濡れたままで部屋に行かないで〜」
何とかしなければ。寝床がびしょ濡れになってしまう。
「ねえねえ。せめて下着を着るまで待って。身体を拭かせてよ」
アマビエさんはいきなりこっちを向くと私の頭をはたきやがった。
「痛っ!何をする」
勝手に部屋に行くなこの野郎。
「あ、その箱、私の仕事道具。勝手に開けないで。そのノートは私のネタ帳、何をする」
ついでにペンまで取られた。
「勝手にテーブルの前に座るな。ノートを返せ」
取り上げようとしたらまた頭をはたかれた。
「だから痛いってば。あー私のネタ帳に落書きしないでよ」
こいつは喋られないのか。なんか字を書いてる。
「何、見せてよ……ここは熊本県では無いのかって? さいたまだよ」
そんな目で見つめるな。怖いじゃないか。なんだ? また字を書いてる。
「……間違えた。帰る? なんて勝手な奴なんだお前」
また頭をはたかれた。
「あ、おい。もう少し説明して。何でうちの風呂から……」
あー勝手に風呂に戻って行くな。何で出てきたのか教えてくれ。
「と、とにかく追いかけなきゃ」
勝手に湯船に入って潜り出すな。
「ちょっと待ってってば」
湯船を見るともう居なくなっている。
「えーと。こういう事が起こるからもしかしてあの条件なのか」
まあいいや。私貧乏だし。しかしネタ帳が濡れてしまったではないか。
「また現れたら弁償してもらうからな」
いきなり湯船の中から水柱がたった。
びしょ濡れになってしまった。……下着姿だからまあいいけど。
「ええと……3年縛りだから出ていけないという」
勘弁して欲しい。あの不動産の野郎、どうしてくれようか。ってそういう問題ではないか。
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