DATA=2 P.N.D.R#2
────前回の探索から1,000時間が経過…………脊髄ユニット再起動……成功。ニューラル・マスターユニット再起動……失敗……再起動……失敗……再起動……成功。
覚醒プロセス省略。覚醒まで6秒……5……4……3……2……1……0
少年────レルムはゆっくりと目を覚ます。いつになく快適な目覚めに違和感すら覚えつつ、周囲を見渡したが周りには誰もいなかった。大抵いつもならば目が覚めたタイミングでドクターや助手の蓮水が部屋に入ってくるが……。
「こういう時はどうしたらいいんだろう」
レルムはベッドの上で呆然と呟く。普段から部屋の周囲は静かだが、今日はその静けさが酷く奇妙に感じた。その時、不意に視界の端に見慣れない物がある事に少年は気付いた。
「なんだろ、コレ?」
それは小さな機械で非常にシンプルなデザインをしていた。厚さは5ミリ程で小さな文字で再生と停止と記されたボタンだけがある板だった。
少年にとって特別興味を惹く様な物では無かった。だが、これが此処にある事。その事が少年の中に奇妙な感覚を引き起こす。
不安と期待、好奇心と自制心。その先にあるかも知れない後悔…………それら入り混じる感情に焦燥感すら覚えながら────少年は再生ボタンに触れた。
……息を呑む。
しばらくの静寂の後、機械の板から微かに音が漏れ始め、ざぁざぁとノイズ混じりの音声が発された。最初の内は何を言っているのかまるで分からなかったが曖昧だった音声が突然ハッキリとしたモノに変わった。
『おはよう、レルムくん。キミがこれを聞いているという事は我々は“失敗”したのだろう』
抑揚の無い、くぐもった声。ドクターのものだ。“失敗”というのが何を指しての事かを知らないレルムはそのまま記録された音声に耳を傾ける。
『人間の欲とは際限が無いな……そんな事に今更気付かされるとは。まぁいい余計な話をしている時間もあまり無い。単刀直入に言えば我々の中から“裏切り者”が出た。結果、この研究所は終わりを迎える事となった。キミを連れて行けない事を申し訳なく思う。もし目を覚ましたキミがこれを聞く事があれば、私の“備え”を持っていくといい。地図をキミのベッドマットの中に隠しておく。……さて、そろそろお別れだ。これからキミの前にあるのは過酷な道だ。せめて、その旅路に幸あらん事を。さらばだ。………………蓮水くん、私たちも離脱しよう。ここもじきにP.N.D.Rの影響下に陥ってしまう。なに? ここに残る、だと? ……分かった』
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