DATA=1 NAS#3

 ────暗い部屋にいる時、何かが潜んでいる様な錯覚を覚える。遠くのはずなのに近い音。普段は聞こえないモノまでもが聞こえてくる。出来るなら密室に住みたい。密室は安全だから。そんな男が居た。


 レルムの前には小さな箱が置かれていた。箱はレルムの両手に収まるサイズの小さな箱で、真四角の7×7の絶妙な大きさをしている。色は真っ白で影も無い。箱の置かれた場所だけが空間が抜け落ちたかにすら見える。

「……なんだろうこの箱。変にしっくり来るような来ないような?」

 ニスの光沢で艶々とした木目のあるテーブルの上に置かれた箱を手に取って少年はひっくり返したり横から眺めてみたりする。

「何も分からないや」

 ひとしきり箱の観察を終えたレルムがそっと箱をテーブルに戻した時、箱の内から声が発された。

「戻せ。元の形に戻せ」

「うわっ!?」

 少年は驚いてテーブルから飛び退く。しかし「戻せ戻せ」と繰り返す箱に恐る恐る近付いて声を掛けた。

「元の形って? 形なら最初から四角だったでしょ?」

「違う。向きが違う」

 言われ、少年は戸惑う。向きなどどう置いても同じの真四角じゃないか、と。しかし何度か試せばその内元の形とやらに戻るだろうと少年は箱に手を伸ばした。

「とりあえずやってみるから」

 そうして少年は何度か箱をひっくり返して元の形を探る。だが、箱からは都度「違う」という返事が返ってきた。それから少年ら何十、何百と箱をひっくり返したがその全てに「違う」と声が返ってきてとうとう少年が痺れを切らした。

「真四角なんだからどれか一つは合ってるはずでしょ!? おかしいよ!?」

 それでも箱は「違う」と返す。そして少年は問うことにした。

「何が違うのかもう少し教えてよ? 向きが違うとかって言ったのは最初だけじゃないか!?」

 すると。


「中身が違う」


 

 

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