第67話 閑話 忘れ去られた人物達




「ねえねえ、麗奈ちゃん」

「何かな、若菜君?」

「私達、忘れられてない?」

「……そんなことはないわ、よ?」

「じゃあ目を合わせて言ってよ?」

「……」

「……麗奈ちゃんは良いよね。名前出たから。私なんて名前すら出なかったのに……」

「……ごめん」

「……こっちこそ」

『……』


 気まずい雰囲気になった琴音の母若菜と姫乃と姫花の母麗奈は無言になる。

 二人は今重大な事実が発覚してしまったためか麗奈の自室で話し合いをしていた。

 二人はソファーに二人がけで座っている。


 その重大の事実は――今回話にほとんど関わっていないというメタ的な話だった。


「――でもこれは由々しき問題ね。このままでは私達のことが読者の方から忘れられ。そして次第に増田君からも忘れられて……」

「そんなこと嫌よ! 麗奈ちゃんどうしよう!?」

「落ち着きなさい若菜」


 涙目で縋り付いてくる若菜友人を落ち着かせる麗奈。


「麗奈ちゃんには何か考えがあるんだね?」

「勿論」


 麗奈はそう言うと立ち上がる。


「今は若い子達が増田君と楽しんでいるわ。この頃一ノ瀬の娘さんもその中に入っているわ。恐らく増田君に気がある」

「ううっ。かぁ〜。その娘さんが……でも幸先輩なら大丈夫だねぇ〜」

「……恐らくね」


 二人はそんな話をすると一ノ瀬の母親幸の話をしていた。

 そんな幸は学生時代の若菜と麗奈の先輩だったりする。


「そう。だから今私達が頑張るのはどうやって若い子達よりも増田君を振り向かせるか。そして――出番を増やすかよ」

「うん。でもどうするの?」

「ふふん、簡単よ。大人の――私達の魅力で増田君を虜にするのよ」

「おおっ!!」


 麗奈の言葉に興奮する若菜。そんな若菜ははっとすると手をあげる。


「――先生! それは……えっちいことも含みますか?」

「ふふっ。それは今からあなたと考えるのよ。ただ増田君を振り向かせるには吝かではないわ」


 若菜の「先生」呼びに特に何も返さない麗奈は笑う。


「ほら、若菜もお酒でも飲んで。これから長い夜が続くんだから」


 そんな事を言う麗奈は近くのテーブルに置いてあったワインをグラスに注ぐと若菜に手渡す。グラスを手渡された若菜は手に取ると悪い顔を浮かべる。


「用意がいいねぇ〜。麗奈さんも悪よの〜」

「若菜もノリノリね」

「たまにはハメも外してもいいでしょう〜」

「まぁね。それじゃあ……」

「うん……」

『乾杯!!』


 二人はお互いのグラスを軽くぶつける。


 そんな二人はお酒も入りある計画を企む。










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