第46話 おもてなし(姫乃)



 増田の前に来た姫乃はテキパキとお茶の準備を始める。

 今は増田の前にチェック柄のテーブルクロスが敷かれその上に湯のみと急須とお湯の入ったポットが用意されていた。


わたくしが今回使う茶葉はずばり玉露ぎょくろですわ」


 そう言い放つと持っていた白色の風呂敷を机の上に置き開ける。中からはやけに豪華なお茶のケース?が出てくる。


「やはり日本茶といったらこれだと思い最高品質のモノをご主人様の為にご用意致しました」

「あ、ありがとう? ただ俺はそんなにお茶は詳しくないから姫乃さんの作るお茶を楽しみにしてるよ」

「はい、楽しみにいていてくださいまし! きっとこちらを飲めばご主人様はお喜びなさると思いますわ」

「はは、お手柔らかに」


 姫乃の言葉を冗談半分で捉えた増田は苦笑いをしながら姫乃の手腕を見る。


 姫乃は初めに用意した湯のみにお湯を注ぐ。次いて手元にあった急須に玉露を茶さじ2杯分入れる(茶葉の量は、約10gほど)。あらかじめ注いでおいた湯のみのお湯をゆっくり急須に注ぎ、約2分半( 茶葉が5から6割開く程度 )待てば完成。


 結構、というかかなり本格的なんだな。自信満々に言っていただけはある。玉露?の香りだと思うんだがまだ飲んでいないのに独特の香りが漂ってくる。


 今丁度姫乃が湯のみに玉露が入ったお茶を注いでいる。そこで発生した心温まるお茶の香りを嗅ぎ楽しんでいた。


「──完成です。ご主人様、温かいうちに召し上がってくださいまし」


 きっちりと2分半待った姫乃はタイミングを狙っていたかのように増田に飲むように託す。


「あぁ。じゃあ頂くとするよ。……ずずっ、これは……うん、美味しい!!」

「……ありがとうございます、ご主人様。やった!(ぼっそ)」


 姫乃から出された湯のみを手に持つ増田は躊躇なく飲む。飲んだ瞬間目をこれでもかと開ける増田。

 姫乃の作ったお茶の味に驚いたからか姫乃の反応を見ていなかった増田。


「なんだろう。これまでの生活で飲んだことがなかった味だ。お茶って言ったら苦いイメージが湧くけど……姫乃さんが入れてくれたお茶はとても甘くて飲みやすいよ。多分目を瞑って飲んだらお茶だってわからないと思う。こんな美味しいお茶、作ってくれてありがとうね!」

「いえ、そのお言葉だけで十分、姫乃は嬉しゅうございます」


 増田の褒め言葉に腰を90°曲げでお礼を受け取る姫乃。そんな姫乃は腰を折りながら見えないところで顔をデレさせていた。


(やった、やりました! わたくしはやったのです!! これはとても好印象だと思います。今までのお茶会での成果も発揮出来ていますしわたくしが純一さんの為に入れたお茶にはお母様から頂いているも入っているので優勝ができれば……)


 知らないところで何かを企む姫乃。


「なんだか姫乃さんが入れたお茶を飲んだら体の奥からポカポカしてきたな。何かそういう特別な効果があるの?」

「はい。わたくしが入れさせていただきました玉露には滋養効果があります。ですのでご主人様の体の弱っているところを強化しているからだと思われます(嘘※ある意味本当)」

「ヘェ〜、お茶でも色々とあるんだな」


 姫乃の話す内容を信じた増田はうんうんと頷く。そんな増田をニッコリとした顔で見つめる姫乃。ただ、よくその顔を……目を見ると何かを狙っているかのように鋭く眼光が開きテーブルで見えない増田のある一部を見つめていた。


 それでも増田は周りのお嬢様や先生方は気付かない。


「姫乃様の作られたお茶は増田様に好印象のようです。他の控えている方は姫乃様のおもてなしを超えられるのか!!」


 川瀬のナレーションが響き渡る。



「……姫乃ちゃんには悪いけど、私勝つよ」


 次の参加者は何か秘策があるのか垂れ幕の中で怪しく嗤う。













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