どうやら俺は幼馴染に助けられたらしい。
「なんでですかー?」
ニヤニヤした心々音が俺の腕に飛びついてくる。
あからさま態度に俺はイラつきを覚えたが、今はこの危機を回避することが最優先。
俺は心々音を振り払うと俺は少し起こり気味な態度を示した。
「絶対に入らない。なんでお前と混浴なんてしないといけないんだ、しかもクソ狭い浴槽で」
「いいじゃないですか、体が密着して良い雰囲気になりますよ?」
「ならんならん、ほんといい加減にしろ。とにかく俺は絶対に入らない」
「じゃあみるくちゃんも入れて三人で仲良く入りましょう?それならいいじゃないですか」
「どうしてそうなる。まだ女三人で入るなら分からなくはない。でもな、俺は男なんだ。お前らとは性別が違う、真逆なんだ。そんなやつが女二人に挟まれて風呂でも入ってみろ、理性が吹っ飛ぶし俺が捕まる。だから絶対に入らん」
「私は全然良いですよ?裸を見られても全然構いません、むしろ光栄です」
「俺は光栄じゃない、むしろ最悪だ」
「ねーねー、良いでしょ~?」
「甘えるような声を出してもダメだ」
押し問答が続く。
このまま話していても埒が明かないと思い俺が出て行こうとすると、心々音は俺の手を掴みそれを阻止する。
「おい、なんだ」
「答えを聞いてません。入ってくれるんですか?」
「入らん、以上」
「そこまで抵抗しますか。なら分かりました、入ってくれないならマネージャーに【RYOさんにホテルで襲われそうになりました。みるくちゃんも襲われそうで私は何も出来ません、どうすれば良いですか】っていうDMを飛ばします」
「は?ふざけんな」
「ふふっ、分かってますよね?あなたはもう逃げられないんです。理解してください」
心々音は今まで以上に顔をニヤつかせた。
DMを送られたら俺が負けるのは当然、むしろ俺は社会的信用を失う。
たとえ心々音が噂を流さなくても、どこからか噂が流れクラス内での信用が落ちるのは目に見えている。
そしてそのまま心々音にハメられて、俺は完全に心々音の物にされるだろう。
そんなの、屈辱的だ。
ここでの最適解は絶対に嫌だが、一緒に入る事。
しかし、入ったとしてもみるくに知られないようにするのは無理だ。
どうする俺、どうする。
「俺はどうすれば助かる」
「助かりませんよ、一緒に入るかDM送られるかという二択しかありません」
「……」
「あ、部屋から出た瞬間DMを送るので逃げるという考えは捨ててくださいね?」
完全に積みだ。
お前ら良いかよく聞け。
たまに「エロゲみたいな人生送りて~」とか「アニメ的展開起きねぇかな~」とか言ってるやついるけど、実際に遭遇したらまじで困るから腐ってもそんなこと言うな。
時々女子と話して良い気持ちになり友達とワイワイやる、そんな人生が一番楽だ。
確かに今のような状況が起きる人生の方が楽しいかもしれないが、困る事の方が多い。
って俺なに言ってんだろ、ついに壊れちまったか俺の思考。
「大好きですよ、涼真くん」
「ああ……入ってやるよ……」
俺は頭を抱え、掠れた声で答えを出した。
~~~
心々音から解放され、俺はお風呂場を後にした。
お風呂場を出ると慌てた様子のみるくとすれ違い、みるくはお風呂場に入って行った。
俺はベッドに腰かけ、今から起こる事について考える。
本当に今から心々音と一緒に風呂に入るのか、そんなの無理だ。
心々音が良くても、俺が良くない。
そうだ、もうふて寝しよう。
たとえ起こされても、俺が寝てる振りをしていればワンチャン回避できるのでは?
俺は安易な考えをし、布団を掛け眠りについた。
「…おき……い」
「…おきて……い」
「あーもう、DM送りますね」
「やめてください!」
俺は心々音の声を聴いて飛び起きた。
「ふん、寝て逃げようだなんてそうはいきませんよ」
「なぁ……ほんとに入るのか?」
「ええ、ちゃんと準備はしてあります」
心々音に手を引かれ、俺はお風呂場に連れていかれた。
少し小さめな浴槽、ギリギリ三人入れるか入れないかという広さの浴槽。
俺は今からここに心々音と一緒に入るのか。
そう思うと、何だか気分が悪くなってきた。
「ほら、ちゃんと見てください」
浴槽に張られたお湯を見てみると、配慮してくれたのかミルク色をしていた。
これで一応互いの大事な部分は見えないか。
しかし、これでは体を洗う時は体を隠すことは出来ない。
それに湯船に入る時も無理だ。
「えーと、せめて水着でも着ません?」
「持ってきてるわけないじゃないですか」
「……そうですよね」
「さっきも言ったじゃないですか、私は別に裸を見られても良いって」
「俺は裸を見られたくない」
やばい、また押し問答になる。
こうなったら【DM送ります】という心々音の最強武器で俺が確実に負ける。
あーもう、どうすれば良い。
そんな事を思っていると、お風呂場のドアが開いた。
「ちょっと二人とも、何話してるの?」
「あ、みるく」
「みるくちゃん、今大事な話をしているので」
「あ、そうなんだ。てか湯船凄い色してるー」
「あーはい、ミルク色にしてみました」
「凄い!心々音ちゃん一緒にお風呂入ろ?」
ナイスだみるく!
ここで何か理由をつけてみるくに心々音を押し付ければ今日は何とか回避できる。
「そっか、さっき心々音が【みるくちゃんのために湯船をミルク色にしてみましたー!】って言ってたぞ。みるく、一緒に入ってやれ」
「ちょっと、涼真くん!私はそんなこと……」
「そうなの心々音ちゃん?」
「うぐっ……」
みるくは余程嬉しかったのか心々音に抱き着いた。
「心々音ちゃん、私の為にそんな事してくれたの?」
「うっ……そうですよ」
心々音は虫が悪そうな顔をしながら俺に視線を送って来た。
心々音、今日はお前の負けだ。
今日に関しては、たとえ心々音がマネージャーにDMを送ったとしてもみるくが証人になってくれるはず。
だから今日は大丈夫だ、明日は……その時に考えよう。
俺はみるくに感謝しながら心々音の方を見てニヤついた後、お風呂場を後にした。
~~~
あーもう、どうして上手くいかないんでしょうか。
私は宮下心々音。
今絶賛好きな人に逃げられた愚かな人間です。
くそぉ、今凄く良い展開で一緒にお風呂に入って良い雰囲気に持って行って夜は既成事実を作れそうだったのに。
なんでこう、邪魔が入るんでしょうかね。
みるくちゃんは可愛いので全然許しますが。
でも仕方ないです、彼は幼馴染にメロメロなんですから。
それに、幼馴染のみるくちゃんと一緒にお風呂に入れれば彼女を研究出来ます。
彼女を知り尽くしてしまえばこっちのもの。
早速一緒に入る事にしました。
服を脱ぎ、全裸になりそのまま一緒にお風呂へダイブ!
えっと……可愛いですね。
女の私から見ても、この体型はズルいです。
すらっとしていてクビレのある腰回り、成長途中で私よりも一回り小さい胸、そして軽い衝撃を与えたら折れてしまいそうな四肢、しかしそれが守ってあげたいという欲を強くさせてしまい可愛く見えます。
断然顔も可愛いですし、愛着が湧きますね。
「ぷはぁ~、あったか~い」
可愛いらしい声、抱きしめたくなっちゃいます。
二人で壁際により、私を背もたれにしてみるくちゃんはよしかかります。
可愛いらしいみるくちゃんを私はそっと抱きしめました。
「うわっ!」
「あ、ごめんね?何か、抱きしめたくなっちゃって……」
「良いよ、何か心々音ちゃんを間近で感じられて凄く良い!」
「はうぅ……」
彼女は私が腕を回すと、そっと腕を握ってくれます。
なんだか心がポカポカして、心地が良いです。
涼真くんが惹かれるのも十分わかります。
ですが、みるくちゃん。
私は負けません、絶対に彼を奪ってみせます。
と直接は言えないので、心の中でそっと言いました。
でも涼真くんが逃げたのは許せません、いつか絶対に復讐します。
私はみるくちゃんを抱きしめながら、そう決意しました。
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