どうやらみるくは無事に達成できたらしい。

 「よし、行きます!」

 

 みるくが操作しているキャラ「ガジェット」がスキルを使い、一番乗りで敵の元にたどり着いた。

 このキャラはハイジャンプというスキルで他のキャラよりも高くジャンプすることが出来る。

 それにより敵が戦っている一つ手前の岩場にみるくがたどり着き、弱った敵をARで落とした。


 「よし、一枚落としました!」

 「おけ、俺がアビリティでアシストするわ」

 

 俺が使っているのは前回同様「フォン」という風を操るキャラクター。

 みるくの前方に竜巻を起こし、その中にグレネードなどの投擲物を入れ込んでいく。

 それにより、相手の着ているアーマーが割れた。


 「おっけ、二枚割ってる!みるく、ショットガンで前に詰めろ!」

 「おっけ!」

 「私はスクリューで展開しますね!」


 一方楓先輩が使っているのはかなりマイナーな「ウォープ」というキャラ。

 使用率などを見ると、俺の使っている「フォン」やみるくの使っている「ガジェット」と比べるとかなり低い。

 それに扱いが難しく、固有スキルの「スクリュー」は扱えさえすれば「フォン」よりも断然強いと思う。

 しかし、難しいと言われる原因がこの「スクリュー」

 これが曲者で、キーマウ移動の基本操作となるWASDと自分の使いやすいように設定した「スキル」と「アビリティ」のボタンを同時に押しながら移動しなければならないため、もの凄く難しい。

 PADの人に関してはボタンが足りないなどの問題があるため、基本使われることは無い。

 

 しかし楓先輩は器用にスクリューを扱い、いつの間にか敵の裏をとっていた。

 そして持っていたARで俺がアーマーを割った敵とフルHPの敵をアッサリと倒してしまった。

 最後の敵がセカンドシールドによる、ダウン体だったため確殺を入れてチャンピオンとなった。

 あ、セカンドシールドってのはダウンしても少し時間が掛かる替わりに自己蘇生が出来るっていう特別なアイテムの事ね。


 「やったー!チャンピオン!」

 「うっし」

 「うまかったよ、みるくちゃん!」

 「ありがとうございます!」


 協力してチャンピオンを取れた。

 一人でやってる時は何も感じないのに、協力して真面目にやったらこんなにも嬉しいのか。

 ただのカジュアルマッチ、敵だってさほど強くはない。

 それなのにこのチャンピオンが凄く嬉しくて、この試合が楽しく感じてしまった。


 「今の立ち回り、凄く良かった。ちゃんと遮蔽物に隠れないがらタイミングを伺って、ベストなタイミングで敵を撃つ。ちゃんと味方のカバーも待っていたし、ほんと良かった」

 「えへへ、そうかな?なんか、嬉しいです」

 「うんうん、私もあんまりデカい口は叩けないけど前と比べたら全然良かったと思うよ?」

 「楓先輩……!」

 「うし、もっかいやるか」


 こうして二回目のマッチに入った。

 二回目も本気でやって、みるくに教え込む。

 そんな感じでも良かったがそれだと味が無い。

 同じことばっかりしていると流石に視聴者も飽きてしまう。 

 何かないか、そう思った時閃いた。


 「よし、みるく。3000ダメージだすか」

 

 前にも説明した通り、HEROXには色んなこと達成する度に称号が貰える。

 例えば一マッチで敵を15人以上倒したら【虐殺者】の称号が貰えたり、一度のマッチで4000ダメージ以上敵に与えたら【ダメージトレイラー】の称号が貰えたりと色々ある。

 そんな中でもこの称号を持ってたら中級者!と呼ばれるのが、この3000ダメージ以上を敵に与えたら貰える【ダメージトラスター】の称号だ。

 まあ一見難しいそうにも見えるが、パーティでやるとなると難易度はガクッとさがる。

 4000ダメージは難しいが3000ダメージならば範囲内のアイテムを回収「コレクトル」というキャラを使い、無限に狙撃弾を回収してスナイパーでチクチクダメージを与えれば取れる。

 近距離も俺が「フォン」を使えば意外となんとかなるかもしれない。


 「えぇっ!それはいくらなんでも……」 

 「まあいけるでしょ」

 「ちょっと、楓先輩!」

 「私でもソロで3000ダメぐらいは出せるし、私がコレクトル使えばなんとかなるでしょ。対面強すぎ人間もいるし」

 「ははっ……何すか、対面強すぎ人間って」

 「えー、だって事実だし?」

 「何か腑に落ちないですね」

 「まあまあ、言いだした人が萎えるのは違うんじゃない?」

 「萎えてないです。さあやりましょう!」


 こうしてみるく3000ダメージ企画が始まった。

 因みに、今始まった二試合目は初動死した。


 ~~~

 企画を始めて7試合程プレイしたが、以前3000ダメージは出せていない。


 「おっけ、やりました」

 「ナイス~、それにしてもカジュアル最近減り早くない?」


 残りの部隊数は自分たちを含めて9部隊。

 最近のカジュアルマッチはシーズン終盤ということもあってか、かなり減りが早い。

 ランキングマッチでエクシャスに行くのを諦めたマスターの人や、ダイアモンド帯で沼っている人などがカジュアルマッチで暴れて行くのだ。

 それによってカジュアルの人の減り方は昔と比べてかなり早くなってしまった。


 「そっすね~、まあ戦いにいくしかないですね」

 「ちょっと待ってください……」


 みるくが着いてこられていないようだったので少し待ち、銃声のする方に向かった。

 みるくがスナイパーでチクチクダメージを与え2500ダメージまで来た。

 残りの部隊数は4部隊、このまま行けば全然取れる。


 「落ち着け、近距離戦は俺に任せろ」

 「了解しました、りょーくんを信頼します」

 「ここにアビリティ立てとくね」

 「ありがとうございます。狙撃弾がなかったんですよね」


 100m程離れた場所で敵がやり合っているのが見えた。 

 みるくにそこを重点的に撃つように指示し、打ち始めて少しした時後ろから微かに足音が聞こえた。

 足音の数からして一人、対面強化のチャンス。


 「みるく、後ろに敵が居る。ちょっと倒してきてくれ」

 「えぇっ!そんな急に……」

 「俺がヘイトを買うから!ほら、来た!」


 後ろから内蔵弾数が多いLMGを持った敵が来た。

 俺が竜巻で上昇し、ヘイトを買う。

 その間にみるくは足音消して、敵に近寄った後ショットガンで敵を倒した。


 「やった、3000ダメージ行きました!」

 「ナイス!このまま4000も行こ」

 「そうだね、向こうは長期戦っぽいしこれはいける試合だね」

 

 敵に少し近寄るため移動し、また100m程離れた敵を撃つように指示をする。

 やはりAIMは良いのか【敵のアーマーを割った!】というログが何個も表示されている。

 

 「後500ダメ―ジ……」

 

 残りの部隊数も自分たち含め3部隊。

 正面でやり合っている敵たちで最後のなので、チャンピオンを取った試合と同じ様に前に詰めろとみるくに指示を出す。

 それに従いみるくは、岩陰に隠れ、さっき倒した敵が持っていたLMGを乱射する。

 

 「後300ダメージ……」


 一つの部隊が壊滅し残り2部隊。

 相手は一枚ダウンした状況だ。

 

 「おっけ、みるく。俺と先輩でヘイトを買うからガジェットで移動しつつダウン体に確殺を入れろ」

 「う、うん……分かった」

 「うし、レッツゴー!」


 前に進み、竜巻で上昇。 

 残っている敵二人が俺に向けて銃を撃つ。

 その間にみるくはダウンしている敵に確殺を入れ、射線を広げて、敵にLMGの銃弾をお見舞いした。


 「あと100……!」

 「おっけ、一枚やった!こいつに確殺入れろ!」


 俺が一枚ダウンをさせ、それをみるくが確殺を入れる。


 「やった、4000ダメージ取れた!」

 「みるく、そっち行ってる!」

 「あっ……」


 カバーに来た敵によってみるくがダウンしてしまったが、楓先輩がすぐにカバーに行きチャンピオンとなった。


 「うい~、ナイス~」

 「やったー!初めて取れました!」

 「あめでとう、みるくちゃん。めちゃくちゃ上手かった!」


 なんだかんだで2時間程配信をしている。

 楓先輩はこの後予定があるらしく、これが最後の試合となっていたため良い結果で終われて本当に良かった。


 「いや~良かった良かった。キリ良く終われるし、何も取れないという最悪な結果にならなくて良かった」

 「私、2000ダメージぐらいが最高で、今回取れて本当に嬉しいです!」

 「そうだったんだ、それは良かったね。みるくちゃんなら普通に3000ぐらいダメージ出せると思うけどな」

 「いえいえそんな……」

 「あ、マズい。時間的にここまでかな」

 「了解しました。ではお疲れ様でした、次コラボさせて頂くときもよろしくお願いします」

 「ああ、こちらもよろしくお願いね。では今日はここまで、おつかえ~」


 楓先輩が配信を切ったらしいので俺も配信を切る。


 「あ、じゃあお疲れ。次回は何するか決めてないです」

 「あ、私も。今日は凄く楽しかったです!おつみる~」


 配信を切り終えたタイミングで楓先輩が「配信切った?じゃあ私はこれで、次回もよろしく!」と言いサーバー内からいなくなった。

 俺も疲れてしまったのでみるくに「じゃあ、お疲れ。明日適当に遊びに行こうかな」と言った。

 みるくは「おっけ~、待ってるね」と言いサーバー内からいなくなったので、俺もサーバーから抜け、すぐにベッドにダイブした。

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