どうやら俺は女子の家にお呼ばれしたらしい。

 金森告白事件から1週間ほど経った。

 金森は学校に居ずらくなったのか学校を辞めて、今は引きこもってるらしい。

 一応、恨みとかで晒されても困るので音声データは運営に渡しておいた。

 学校も学祭準備期間と入り、活気づいている。

 あと、スマホは初任給と言って良いか分からないが、給料が入ったので最新型にした。

 規約書に報酬は運営と折半と書いてあったが、あんなに入ると思わなかった。


 昨日のLHRで班決めがされ、俺は学級旗班となっていた。

 俺以外のメンバーは、みるく、心々音、紅音さん、宮前さんというみるくほどではないが小動物感が感じられるちょっと可愛い女子と赤城という身長が少し小さめな男子の計6名だ。

 宮前さんがイラストを描けるらしく、学級旗は彼女が二つの案を出し、クラスで多数決となった。

 多数決の結果、ピンクを基調とし真ん中に女性5人組のシルエットが描かれたものになった。


 B6サイズの紙全体に描かれた、学級旗案を大きな布のようなものに写していく。

 縁取りから始め、プロジェクターで下書きを大きく映し布の大きさに合わせた後、外枠から徐々に描き埋めていく。

 大人数で書いても邪魔になるだけなので、宮前さんと赤城くんで描き進めていく。

 紅音さんはプログラミング部に入っているのと、学級旗の作業も暇な人だけで行える範囲内ということで今日は欠席だ。

 

 腕を組み、偉そうに見ていた心々音が口を挟む。


 「宮前さん、凄く絵が上手いわね」

 「あ、ありがとう。中学からデジタルで描いてて、紙にも多少なら描けるかなって」

 「なるほど、デジタルって言うとぺんたぶ?みたいなものを使っているのかしら」

 「そうだね、パソコンにペンタブを繋いでタブレットで描いてるね」

 「なるほど、今度デジタルで描いたものを見せてくれないかしら?」

 「ええぇー?恥ずかしいからなぁ……」

 「私も少し興味があるの、教えてくれないかしら」

 「じゃあ、今度私の家来る?」

 「ぜひ、行かせてもらうわ!」


 俺は会話の終わりが見えたので、俺は心々音に耳打ちした。


 「なんでそんな事聞くんだ?」

 「そうね、真ん中の5人組の顔の書き方を見て見なさい」

 

 俺は心々音に促され、宮前さんの書いた下書きを見た。

 鉛筆書きで少し見づらかったが、目を凝らしてしっかりと見た。

 男子が好きそうなアニメのような絵柄、線がしっかりとしていて輪郭や顔、その他にもおかしな部分が見られない完璧と言って良いほどの絵。

 心々音はそれに何か感じたのだろうか。


 「見た?これ見て、この書き方何か似てない?」


 そう言い心々音が見せて来たのはTwltterの画面。

 「宮前御前」と書かれたアカウント名、フォロワーは……12万人いる。

 心々音がメディアという場所を開き、宮前御前さんが過去に描いた絵を色々見せて来た。

 

 「これ、完全にそうでしょ」

 「ああ、ほぼ確定だな。まず名前がな……」


 顔のパーツ部分の書き方、輪郭、髪の毛の書き方など下書きと見比べても違いがあるか分からないレベルで違いが無い。

 特に目の書き方がほぼ一緒だ。


 「ふ~、とりあえず外枠終わり。赤城くんの方は?」

 「あ、ちょっと届かなくて……」

 「そうか、涼真くーん!ちょっと手伝ってくれなーい?」

 「あ、はい。分かりました」


 赤城くんから鉛筆を貰い、届かなかったであろう場所に線を入れていく。

 宮前さんに確認しながら作業をし、初日で布に下書きを写すことが出来た。


 「良いね~、私が思ってた感じになってる!」

 「うぉー」

 「流石ですね、宮前さん」

 「僕は小っちゃくて何も出来なかったけど……」

 「気にするな、赤城」


 初日の作業は下書きを写す所で終了した。

 

 帰り道、みるくと心々音と歩いていると急にみるくが腕に抱き着いて来た。

 いつものことか、と思いつつ剝がそうとしても剥がせない。

 いつも以上に力を入れているのかそれとも謎の力が働いているのか、俺が全力で剥がそうとしてもはがれなかった。

 

 「おい、離れろ」

 「やだ」

 「なんでだよ」

 「取られるかもしれないから」

 「どういう事なんだよ」

 

 みるくは抱き着いていた腕から離れ、俺と心々音の前に出ると体を広げ大の字にした後


 「心々音ちゃんでも油断できないの!」


 とみるくにしてはおおきな声で言った。

 

 「いきなりどうした」


 心々音に助けを求めようと、隣をみると心々音は不敵な笑みを浮かべたと思うと俺の腕をガシっと掴み、腕を絡ませさらには、手を掴んだと思うと指を絡ませ、俗に言う恋人繋ぎをしてきた。


 「ちょ、おい!」

 「ふふ~ん。みるくちゃんが遅いからこんな風に取られちゃうんですよ~」

 「……」


 俺の腕に頭をスリスリさせる心々音。

 その状況をみるくは、殺意の目で心々音に視線を送っていたと思うと今度は涙目にし、俺の空いているもう片方の腕に抱き着いて来た。


 「わ、私だって負けないから!」

 「おい、何か勘違いをしてないか!?」

 「涼真くんは私の物ですからね~」

 「ちょ、ややこしくするな!てか俺は、お前のものじゃねぇ!」


 両手に花を添えた俺は、周りから注目される。

 恥ずかしくて、一刻も早くこの状況から解放されたいが二人ともなぜか離れない。

 というか、剥がせない。

 絶対世界最強磁石とか瞬間接着剤とか付いてるでしょってくらい離れない。


 「ふふ~ん」

 「ぐぅ……!」

 「お前ら離れてくれよ……」


 俺は両腕にお荷物を抱え、呆れながら駅に向かった。


 ~~~

 

 学校祭準備期間だが今日は特に活動が無い、久々の休みということで今日もみるくの家、と言いたいところだが「今日は私の家に来ませんか?」と心々音に誘われたので大泉で降り、心々音の家にお邪魔している。

 壁一面真っ白、屋根だけ青いという不思議な外装のお家にお邪魔した。

 

 「お邪魔しま~す」

 「失礼します……」

 「なんもかしこまらなくても良いのに」

 「まあまあ」


 ミシミシと音がし、段々と足音が大きくなる。


 「あら~、こんにちは。心々音のお友達?」


 白いエプロンを身に着けた、俺よりも少し小さい身丈。

 顎に手を当て、いかにも母親感を醸し出す女性が心々音が床に置いた学生バックを拾い上げた。

 

 「こんにちは、友達の荒川涼真です。こっちが幼馴染の中山胡桃です」

 「あ、えと……どうも……」

 「あらあら、どうもこんにちは。心々音の母の心美ここみです、今日は遊んでくれてありがとうね」


 心々音のお母さんはそう言うと、心々音のカバンを持ち、どこかに行ってしまった。

 「私の部屋は二階だから~」と部屋を案内され「何か飲み物とか持ってくるね」と言い心々音は部屋から出て行った。


 「何か、女子って感じだな」

 「凄い、キレイ……」


 壁一面真っ白、余計な物は飾られておらず汚れも一切無い。

 二つある窓の下に、本棚があり本やアニメのフィギュアが飾られている。

 ベットも転落防止用の白い格子が付いたもので、上には白いクマのぬいぐるみと白い布団が整頓された状態で置いてあった。


 「ふ~、ごめんお待たせ」

 「いやなんも」

 「何あるの?」

 「ん?メロンソーダとかホワイトソーダとかあるよ?」

 「私はメロンソーダ!」

 「はいはい、今注ぐね」


 いかにも女子らしい部屋で、俺は何かと緊張していた。

 みるくの部屋も女子らしいといえばそうだが、あの部屋はもう行き過ぎて慣れている。

 しかし、みるく以外の人の家、しかも女子となるとドキドキが止まらない。


 「あれ?涼真くん、いつもみたいな高圧的な態度はどこにいったんですか?」

 「う、うるさいな。緊張してるんだよ」

 「ふふっ、みるくちゃん以外の女子の部屋は初めてなんですか……?」

 

 図星を付かれ、俺は分かりやすいように動揺した。


 「ふふっ、ほんと面白い。涼真くん、ちょっとベッドに座ってくれませんか?奥の机に飲み物を置きたいので」


 心々音に促され、汚れ一つない純白なベッドの上に俺は尻を置いた。

 その瞬間、狙っていたかのように心々音が俺の肩を押し、ベッドに押し倒した。

 急な事だったので俺は腰を抜かして、上手く立つことが出来ない。

 その間に心々音は俺のお腹の上に乗り、馬乗りになった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る