どうやらコラボは波乱の展開になったらしい。
「ぐおぇ~」
今日もまた、だらしない声と共に起床。
心々音は家に帰り、みるくは……俺の隣で寝ている。
あの後、心々音は「電車の時間的に今日はここら辺でお暇させて頂きます」と言い帰った。
みるくにも心々音が帰る時に帰るように言ったが「やだ!今日はまだ居る!」と駄々をこね、そしてなぜか一緒に寝ていた。
凄くドキドキしていて、鼓動が凄い。
「んめぁ~、頭痛い……ってりょーくん!?」
「お、おはよう」
「な、なんで同じ布団で――」
「その、襲ったりしてないから!俺も今起きたところで驚いてたところだから!」
ダメだ、本当に記憶が無い。
なんで一緒に寝ているんだ?風呂は入ったのか?あの後、何があった?
うっすらと思い出して来た、あと少し。
ふと机を見てみるとコップが二つ置いてあった。
「あ、思い出した」
そう、あのコップは心々音が帰る前「お疲れ様です、何かついできますよ」と言いお茶を入れて来たものだ。
それで、みるくと俺はお茶を飲んで、それで……
「急に睡魔が襲ってきたってわけか」
「何独り言言ってるの?」
「昨日の事、多分心々音が何か仕掛けたんだと思う」
「何かって?」
「それは分からん、が。あいつからお茶を受け取って、それを飲んだ後に急に睡魔が襲ってきたのは思い出した。つまり、あいつが犯人で間違いない」
「信憑性ない!」
「だって分からんもん!とりあえず、俺は起きる」
「やだ!まだ居て!」
「なんでだよ!俺は一刻も早く起きたいの!」
「もう目開いてるじゃん、それ起きたって言うでしょ!また昔みたいにくっつきたいの……」
駄々をこねられても、俺はもう昔のようにくっつき合うのは無理だ。
確かにみるくから引っ付いてくることはある、でもあれは、みるくが可哀想で親身になってあげたい。
そう思っているから何もドキドキせずに抱くことが出来る。
でも、今のように普通の状態でくっつくのは無理だ、俺の心臓が持たない。
「ダメだ」
「なんで……!」
「俺だって男なんだ、みるくみたいな可愛い子とくっついていたらドキドキして死んでしまう」
「それってわたしの――」
「嫌だ、もうドキドキするのは嫌なんだー!」
俺は逃げるように部屋を飛び出した後、階段を急いで降りてリビングに行った。
リビングには新聞を読んでいる父が居た。
「どうした、奇声発しながら階段から降りてきたみたいだが」
「ああ、父さん。おはよう、実は今みるくが――」
「なんで逃げるの、りょーくん!」
ドタドタと大きな音を立て、みるくが階段から降りて来た。
みるくはリビングにくるや否や俺に抱き着いた。
「ちょ、だから!抱き着くなって!」
「ははは、くるみちゃんは何も変わってないな!」
「あ、おじさん。おはようございます!」
「おう、おはよう!」
「ちょっと助けてくれよ、親父ぃ!」
父は俺とみるくのやり取りを懐かしそうに笑って見ていた。
こんな事、昔にもあった気がして記憶が蘇る。
みるくが俺と遊んでいて、違うおもちゃを取りに行くためリビングに行こうとしたらみるくが抱き着いて来て、それでいて全然離してくれなくて、無理矢理離したら泣き出しちゃって。
凄い、懐かしいな。
懐かしさの余韻に浸っていたが、結局みるくが離してくれることは無く。
俺は渋々、そしてドキドキしながらみるくと離れなかった。
~~~
「今日もお邪魔するぞ、涼真!」
「いつからそんなキャラになった」
「てへ」
今日は心々音とのコラボの日。
本来コラボとはお互いが配信の枠を取って、談笑したりゲームをしたりするはず。
しかし、心々音は今日も家にやって来た。
「今日はコラボなんだろ?なんで家に来たんだよ」
「オフコラボですよ。オ・フ・コ・ラ・ボ!」
オフコラボについても勉強した。
オフコラボとは、配信者の片方がコラボ相手の家や活動場所に行って一つの枠で配信をするというもの。
中の人同士で会って、配信をするともまとめサイトには書いてあった。
「なんでだよ。俺のチャンネルで配信するのか?」
「ええ、私のチャンネルじゃなくて結構です」
「これで女性視聴者には私とみるくちゃんが……」などと何かブツブツ言っていたが最後の方は良く聞き取れなかった。
俺は言われた通りのサムネの設定、タイトル、そして概要欄の設定を経て枠を作った。
この枠作り、二回目にしてはスムーズに出来たと思う。
これで次回は簡単に配信出来そうだと自信づいていると心々音が話しかけて来た。
「そういえば、昨日はよく眠れましたか?」
「は?あ、そうだ。お前、何か仕込んだだろ」
「いえいえとんでもない、そんな事……したかもしれませんね」
「おい、何しやがった」
「おおう、急なジト目。感謝です」
「なんでや、何したか教えんかい!」
「痛っ、ちょっと!昨日に続きデコピンとは何ですか!」
「うるさい!何をしたか教えなさい!じゃないと今日のご飯抜きにしますよ!」
「何なんですか……?それ、私はあなたの親ですか……?」
「そのつもり」
心々音は「はあ」と大きなため息を吐いた後、昨日何をしたか教えてくれた。
結論から言うと、薬を盛ったらしい。
俺とみるくが二人で寝ている所を見たかったのだとよ、とんでもない女だ。
しかもコイツ「ほら~」とか言いながら俺とみるくが二人で寝ている写真を撮っていた。
帰ったふりをして、俺たちが眠った頃を見計らって戻って来て撮ったらしい。
何をしたかは言わないが、一回シバいて写真は消させた。
「酷いですね、涼真くんは……」
泣きそうになっている心々音をよそに、俺は配信に不備がないか確認を始めた。
~~~
「うい~、始めるからな?」
「はいはい、良いですよ~だ」
時刻は3時、今日は休みという事もあり昼過ぎに配信するのが一番視聴者を集められるという理由で少し早めの時間帯にした。
シバいてから心々音の機嫌は悪い。
みるくにも慰めてもらうように言ったが「それは女の子にするような事じゃないよ……」とガチ引きされてしまったが、慰めてはいた。
「またされたら、私に行ってね?もししたら、りょーくんが世界で一番嫌いな事やり続けるから」と俺に聞こえる声で言っていたが。
脅されてるんですかね。
「もう、悪かったって。頼む、コラボならスイッチだけは入れてくれ」
「むぅ、分かってますから早くしてください」
「はい、今押しました」
俺と心々音声を変えるため咳払いをした。
声を変え続けるのも至難の業、いつまでもつかは分からない。
「皆さん、こんにちは。staralive所属のRYOです。今日はTwltterでも告知した通り、コラボします」
コメント欄では「確か夏南ちゃんだったよな?」「夏南ちゃん枠取ってなくね?」など疑問の声が多かった。
「あ、夏南さんが枠取ってなくて困惑してる人が多いんで、もう出て来てもらいますか」
「やあ、みんな。三星夏南だよ~、今日は新人ストリーマーくんの家にお邪魔させてもらってるぞ」
「おい、オフコラボかよ!?」「おいRYO、そこ変われ!」「なるほどね」など驚いてる人も居れば冷静に席の交代を要求してくる奴など、コメントは本当に面白い。
「まあ、オフコラボと言っても特にすることは無いんだけどね~、まだ新人くんのパソコンにキャプチャソフトとか入れてないから、僕の姿も見せれないしね~」
「なんだそれ、そんなのあるのか」
「こら、先輩に向かってなんだその口の利き方は」
「すみませんでした、夏南先輩」
「偉いぞ新人くん、そんな子には頭を撫でてあげよう。よしよし」
そう言うと心々音は嬉しそうに俺の頭を撫でてくる。
なんだか心地よくなる中、後ろから凄く鋭い視線を感じた。
「ちょっと夏南ちゃん?私のりょーくんに手を出すのはやめてもらっても良いですか?」
みるくの登場にコメント欄も反応した。
「おい、これ修羅場ってやつじゃね!?」「こういう展開めっちゃ好き!」「やべ、どっちも応援したくなってきた」など似たようなコメントが一気に投下され、コメント欄はとんでもないスピードで流れ始めた。
「おい、みるく。なぜ出て来た」
「我慢できなくなっちゃったから仕方ないじゃん」
「ふふん、僕と新人くんを掛けた勝負をするつもりかい?」
「望むところですよ、私はりょーくんの幼馴染。絶対に負けません」
「はい、終了。お前らヒートアップしすぎ」
「なんでだい?僕はこれでも真剣なんだが……?」
「そうですよ、りょーくん」
「そういうのはまた後でやってくれ、ここは俺の枠なんですー喧嘩はよそでやってください」
「じゃあ、あれだ。センスマで勝負だ、新人くんと戦って勝った方が新人くんを手に入れれる。それでどうだ」
「ふふ、良いですね。りょーくん、早速一戦交えましょう」
「はあ……分かったよ」
センスマとは大戦争スマッシュキャラクターズの略。
色んなゲームのキャラクター同士が戦えるゲーム。
そして、夏南、みるくの順で戦ったが俺に勝つことは出来ずしょんぼりしていた。
「まだだ、僕はまだ新人くんに負けていない」
「いや、負けただろ」
「みるくちゃんと僕、一回どっちかが勝つまでやろうじゃないか」
「そうですね、そうしましょう」
「お前ら、発言には責任もてよ?」
この発言からかれこれ50回程戦っている、配信時間は4時間を超えさすがに全員疲れて来た。
それでも二人とも諦めないため、俺が折れて夏南の番で負けてやった。
「やった、勝った!」
「オメデトー」
「なぜ、そんなに棒読みなんだい?」
「スゴクツヨカッター」
「何かムカつくが、そうだね。お願いはまだ使わないでおこう」
「あら、貯金してしまうのですか?」
「うん、いつかの時に取っておいて新人くんにはぎゃふんと言わせたいね」
「そっか、分かった。視聴者の皆、長時間配信に付き合ってくれてありがとう。今日はこの辺で、次回の配信はTwltterで告知しまーす」
「じゃあみんな~、おつなん~」
「「おつなん~」」
俺とみるくが挨拶をした数十秒後に俺は配信終了のボタンを押した。
時刻は7時、窓から見える外はすっかり暗くなっていた。
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