どうやら俺のクラスメイトはみるくと同じVtuberだったらしい。
こいつ、今なんて言った?
俺の聞き間違いじゃ無ければ「仕事はVtuber」って言ったよな?
俺が心々音に仕事の事は本当なのか聞き直そうとした時、もうすぐ駅に到着するというアナウンスが流れた。
「どうやらもうすぐ着くみたいですね。一度降りて話しましょうか」
心々音は席から立ち上がると「では先に行っていますね」と言い一両目に行ってしまった。
隣を見るとみるくが口を開けてポカンとしていた。
肩を揺らしてみるくを現実世界に引き戻す。
「あっ、ごめん。てかあの人!Vtuberやってるって言ってたよね!?」
「ああ」
みるくはとても驚いているようで、目を見開いてこちらに視線を送って来た。
みるくはVtuberをやっていると運営から口止めされていた、だから俺にも何も言わず活動を続けていたため俺が配信に乱入してしまった。
だが、心々音は俺たちを見てから何かを知っていたかのようにニヤニヤしながらVtuberの事を話して来た。
それに俺らにとってVtuberというもの自体がタイムリーな内容すぎる。
ついさっきまで謝罪配信をしていた俺らにとってVtuberという単語に対して敏感になっている。
心々音は何かを知っている。
俺はそう思った。
「とりあえず心々音のとこ行くぞ」
「う、うん……」
俺たちも席から立ち上がり一両目に向かった。
一両目には老人が3人程乗っているだけで若い乗客は俺らと心々音だけだった。
「おい、どういうことか説明しろ」
「もう、そんなに迫んないでよ。そんなに私の秘密が知りたいの?」
「Vtuberしてるって言った時点で秘密もクソもないだろ」
心々音は「それもそっか、てへっ」とおでこに手を当ててあざといポーズをとって見せた。
前会った時とは違い、可愛さは感じなくはないが苛立ちの方が強く感じた。
しかし、後ろにいたみるくは心々音が可愛かったのか顔をニヤつかせていた。
やがて電車が停止して駅に着いた事を知らせるアナウンスが流れた。
「早く行きましょう」と心々音が先導して降り口から降りた後、改札で切符を見せてお金を払った。
駅構内に人は10人程度しか居なく閑散としていて、売店の電気は点いているが外から人は見えなかった。
心々音はそんなものには目も触れず、とことこと走って外に行ってしまった。
俺とみるくはそれを追いかけるように走って行き、外に出た。
「ふー、外は涼しいね」
心々音はおでこを腕で拭う素振りをした。
「汗なんて出てないだろ」
「そんなことは無いよ、電車の中は暑かったからね」
心々音はこんなことを言っているが電車の中は全くと行って良いほど熱くなかった、むしろ少し涼しいくらいだ。
それに、心々音は別に重ね着をしているわけでもない。
どうしてそんなに行動を強調するのだろうか。
「まあ良い、それより飯食いに行くぞ。お前の事を詳しく聞きたいが、今は腹が減った」
心々音は顔をニヤつかせ「なんで私の事が気になるのかな?」と顔をグイっと近づかせてきた。
お世辞抜きで心々音は可愛い、だからこんなに顔を近づけられるとこちらもドキドキしてしまう。
このまま行けばキスをしてしまいそうな距離、それを塞ぐようにみるくが間に入った。
「ちょっと心々音ちゃん!何やってるの!」
「んー?涼真くんが私の事気になるって言うから、私が一から手取り足取り教えてあげようと思って」
「心々音、その……困る……」
「ふふっ、可愛い。まぁ今はこれぐらいにしてあげるとして、ファミレスに行くとしますか」
そう言い心々音はまた先陣をきって歩き始めた。
正直、心々音のああいう行動は困る。
こう、距離感が近すぎてドキドキしてしまって上手く話せないし行動も起こせない。
普通にしていればただの可愛い女の子何かがズレている気がする、それと俺と亮以外の男子と話しているのは見た事無い。
あの日俺に絡んできたのも不思議だったのに、どうして俺に気が付いただけで話しかけて来てくれたのだろう。
それにみるくも居た。
普通なら気まずくて話しかけるなんて事、普通の生徒ならまずしない。
行動力があると言った方が良いのか変わり者だと言った方が良いのか分からない。
5分程歩いて、ファミレスチェーン店「ビクトリス」に着いた。
三人揃って中に入り、待合表に名前を書いて少し待って居ると、店員さんが来て席に案内してくれた。
俺の隣にみるく、そして正面に心々音という席順で座った。
「やっと落ち着きましたね」
「お前が行動力ありすぎて騒がしかっただけだろ」
「ふふっ、褒めてるんですか?」
「褒めてねぇよ。ほら、何頼むか決めろ」
とっとと頼むものを決めてしまおうと思ったが、みるくがさっきから空気と化していたので先にメニュー表を渡した。
「あっ、ありがとう……」
「ああ。それで本題に移りたいのだが」
「涼真くん、やっぱり私に興味があるんですね」
「確かに興味はある。だがお前に興味があるんじゃなくて、お前の仕事に興味がある。」
心々音は「ぶぇー」と不満そうな声を漏らした後「じゃあ説明しますよ」と言い仕事について説明し始めた。
「単刀直入に言うと、私はみるくちゃんと同じstaralive所属のVtuberです。
「ほう」
「そうですね、証拠はこれですかね」
心々音はそう言うとVtubeの画面を見せて来た。
チャンネル名は「三星夏南/Mitubosi kanan」と表示されていてチャンネル登録者は6万人を超えていた。
みるくの登録者数が5万3千人程度だったのでみるくの登録者数よりも約7千人も多い。
ぱっと見ただけだが人気の要因はキャラクターの外見だろう。
明るい茶髪にふんわりとしたボブ、寝間着のような服を着ていておっとりとした雰囲気を醸し出していて目がたれ目なせいかおっとりさが増している。
「これだけじゃ調べただけって思われてしまいますね。では、この動画のコメントにハートマークをつけて見せます」
心々音は俺に画面を見せながら説明した。
「このハートマークは動画を投稿した本人しかできない仕様です」
「なるほど」
「それで、はい。今ハートマークがつきましたよね?」
確かにコメントの右下にハートマークが付けられた。
「これで証明になったでしょうか」
「ああ、問題ない。お前が本当にVtuberをやっている事は分かった」
「良かったです」
「それでだ、なんでみるくが中野みるくだと知っていてどうして俺たちにVtuberをやっている事を教えてくれたんだ?みるくは運営からVtuberをやっている事は誰にも言うな!って口止めされてたけど」
心々音が「それはですね……」と説明しようとした時、隣から「ぐぅ~」と大きな音がなった。
隣を見るとみるくが顔を真っ赤にして両手で顔を隠していた。
「ふふっ、みるくさんはどうやらお腹が減ってるようですよ?涼真くん」
「……説明は後で良い。先に頼むか」
「……りょーくん、ごめんね」
「気にするな」
あれだけ精神力を使う配信をしたのにも関わらず、昼飯も食べてないとなると相当お腹は減っているはずだ。
お腹が鳴ってしまうのも仕方が無い。
心々音の方を見ると「私はもう決まってますので」と笑顔でメニュー表を渡された。
俺もここに来るときに食べるものは大体決まっていたので、貰ったメニュー表を元の位置に戻してチャイムを押した。
ほどなくして店員が来たので、トリプルグリルのバイキングセットを頼んだ。
後ろから袖を引っ張られる感触があったので後ろを見るとみるくが「同じの頼んで……」と小声で言ってきたので追加で注文した。
心々音はチーズインダブルハンバーグのバイキングセットを注文していた。
みるくがバイキングを取りに行きたそうにしていたので席を空けて奥側の席に座った。
「それじゃあ本題に入りましょうか、なぜ私があなた達の秘密を知っているのか」
「ああ、教えてくれ」
そう言い心々音は、運営からどう説明されたのか話し始めた。
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